「0歳からの英語教育」は、やるべきなのか 英語早期教育の弊害?日本語が苦手な娘に

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【パンプキンからのコメント】

早期英語教育に関する功罪の論点は、専門家によっても大きく分かれていますね。推進派の論点の最たる理由は、乳幼児が母国語を周囲の人から音声として自然に覚えるように、英語も頭が柔軟なうちから始めるほうが吸収力がよく、LとRの発音の区別や、日本語より難しい母音・子音の使い分けもマスターしやすいというものです。

一方、英語教育は10才以降、あるいは中学生以降から始めて十分という反対派の専門家の論点は、「早期英語教育で母国語の発達能力が遅れる」や「ときには英語も母国語も共倒れになるケースがある」というものです。第2言語は母国語をしっかり学んだあとで始めるべきで、10才以降に言語習得能力は落ちても、思考力がアップし吸収力も健在だから、新しい言語の習得はそれからで十分だという論点です。

「早く始めた教育」の質次第

英語ができない私が、英語の早期教育に関してうんちくを語る愚は避けたいと思います。ここで1冊ご紹介したいのが、鳥飼玖美子氏の『危うし!小学校英語』という本です。

私が調べた英語早期教育に関する賛否両論の中で、鳥飼氏は教育現場を熟知し、実際の調査結果にも基づいて発言されている方です。

少しだけ内容を紹介しますと、私学小学校で英語教育を受けた児童と中学校から始めた児童の英語能力は、半年から1年で差がなくなるというデータが示されています。

早いほどいいという主張には根拠がなく、早期に英語を学ばせて、その英語で子どもをどうするかという方針や理念もなく、「親世代の英語コンプレックスや英語への怨念等が見えざる力のひとつとして、“英語は早期から”」と信じられているにすぎないと論じられています(少し粗い要約ですが)。

これには少し、異見を持っています。学校教育の英語が始まるより前から学んでおくと、自分の英語力が授業や多くのお友達より進んでいるという自信がつき、たとえばウサギがカメに負けまいと一生懸命走るように、楽しんで英語の勉強を進められる子は多いと思うからです(童話のウサギのように昼寝さえしなければ)。また、小学校で受けた英語教育のプログラムに問題があり、十分英語を習得できる教育になっていないために、“小学校時代の英語の貯金”がすぐ追いつかれてしまう、という考え方もできます。語学習得に関しては、十分、その言語に触れる機会があるならば、幼児が自然に言語を覚えるように、幼少期のほうが言語習得能力が高いのは論を待たないからです。

また、この論を逆手に考えると、たかだか2歳半の時点での“母国語の習得レベルの差”も、小学校などに入るにつれ、ほぼ意味をなさない“差”になっていくと考えられます。

大切なのは、2歳半時点での小さな“差”や母国語か英語かの選択でもなく、今後も英語・母国語の双方を、頭の柔らかいうちに楽しく学べる環境を与えてあげることではないでしょうか。

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