GWに家族全員で話したい「生前贈与」のススメ おトクな相続術やシミュレーション法を伝授

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改めてまとめると、生前贈与の選び方は下記のようになる。

<暦年贈与を使うべき人>
・110万円を超える贈与で節税できる人(最適金額は表で計算)
・7年以上生きる自信がある人
<相続時精算課税制度を使うべき人>
・毎年、110万円以内の贈与が最適な人
・7年以上生きる自信がない人

 

暦年贈与は110万円を超える贈与が可能で、相続税の税負担を減らせる可能性がある。一方で、7年以内に死んでしまうと贈与したお金が相続財産に加算されてしまうという懸念点もある。

相続時精算課税は110万円以内の贈与で事足りる人に適している。また、7年以上生きる自信がない場合は、直前の贈与であっても持ち戻す必要のない相続時精算課税のほうが有利だ。

孫に渡す選択肢

さらに賢く贈与を行う方法もある。ポイントは暦年贈与の持ち戻しの「対象」にある。実は、すべての生前贈与が持ち戻しの対象になるわけではないのだ。

対象となるのは「相続又は遺贈により財産を取得した者」に対しておこなった生前贈与となっている。逆に言えば、法定相続人の立場にない孫や息子の妻、娘の夫への贈与、あるいは遺言による遺贈を受けていない人への贈与は、持ち戻しの対象外となる。こうした人たちへの贈与は、7年以内であっても持ち戻す必要はないのだ。

息子の妻、娘の夫への贈与には、二の足を踏むかもしれないが、孫への贈与は現実的ではないだろうか。孫に贈与すれば、世代を1つスキップすることにもなる。自分の渡した財産を子どもが孫に贈与・相続する必要がなくなり、その際の税金を抑えることもできるのだ。にもかかわらず、孫への贈与はまだしていないという方は意外と多い。

場合によっては、子どもには相続時精算課税制度を、孫には暦年贈与を、というように、贈与する相手によって、両方の制度を使い分けることもできる。贈与の対象者、金額、方法などを総合的に検討して最適な形を決めるのがいいだろう。

貞方 大輔 一般社団法人相続終活専門協会 代表理事

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さだかた だいすけ

一般社団法人相続終活専門協会代表理事。アレース・ファミリーオフィス取締役。立命館大学卒業後、大手生保を経て、アレース・ファミリーオフィスへ入社。

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