「貧困大国」アメリカは、衰退していくのか 人気エコノミスト中原圭介氏に聞く【前編】

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ウォルマートの店舗前で、「賃上げデモ」を行う人々(写真:ロイター/アフロ)
的確な経済予測に定評があり、2014年の景気失速と消費再増税の断念、シェール革命による原油価格下落などを、すでに2013年の段階で予測していた中原圭介氏。
今回、新刊『格差大国アメリカを追う日本のゆくえ』(朝日新聞出版)を上梓に際して、日米の金融緩和がそれぞれの国民にもたらす影響、アベノミクス後の日本の格差拡大などについて、"美人すぎる金融アナリスト"として人気急上昇中の三井智映子氏が2回にわたってインタビューする。第1回は「アメリカの深刻な格差のゆくえ」について。

アメリカの庶民の生活は苦しくなっている

三井:中原さんは、新著で「日本はアメリカの経済政策を後追いしてはいけない」と警鐘を鳴らしていますが、まずはアメリカの格差の現状についてお伺いしたいと思います。

三井智映子(みつい ちえこ)●フィスコリサーチレポーター。NHK教育「イタリア語会話」でデビューし女優として活動。2013年、講談社より『最強アナリスト軍団に学ぶ ゼロからはじめる株式投資入門』を出版し、「美人すぎる金融アナリスト」として話題に。わかりやすい初心者向けの投資解説やセミナーを得意とする。

中原:世界経済で今のところ、唯一好調を維持しているのがアメリカ経済ですが、アメリカの社会全体を仔細に見ると、表面的な好調さとは大きく異なる姿が見えてきます。実態として、アメリカの庶民の生活は、GDPなどの経済指標の好調ぶりとは裏腹に、とても苦しい状況にあります。

アメリカ商務省の国勢調査局では、1967年以来、世帯所得別(所得上位5%、上位20%、下位60%、下位40%、下位20%)の毎年の平均所得のデータをとっています。それを元に各所得帯の平均所得の推移を知ることができます。

そのデータからわかるのは、過去のアメリカの経済成長は国民の所得下位60%の世帯に属する人々にはほとんど還元されておらず、ひたすら上位の人間が所得を伸ばすことによって成し遂げられていたということです。

アメリカ国民の平均所得の推移をみると、名目では右肩上がりに増えているのですが、実は増えた分のほとんどは上位数%の高所得者たちが稼いでいて、庶民の家計は全く豊かになってはいないのです。

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