ゴルフをやりたいなら、「酒場」へ行こう! ゴルフ場に行かなくてもデビューはできる

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当時は「なんだ」と思って1回きりしかやらなかったが、あれから十数年経つ間にシミュレーションゴルフはかなり進化をしている。ゴルフバーにあるシミュレーションゴルフは、練習場のようなマットの上から実際にボールを打つ。目の前にはスクリーンがあり、コンピューターグラフィックス(CG)や実写のゴルフ場(ホール)が映し出されている。打つと、ボールへの当たり具合などを器械が検出して、飛距離や方向を割り出し、スクリーン上に自分の打ったボールの軌跡が描き出される。簡単に言うと、そんな感じだ。

実際にやったところ、これがうまくいかない。なんといっても、スクリーンに映し出されているのは、全米オープンの会場にもなっている名門ゴルフ場だ。機器の精度も上がり、ちゃんとしたショットにはいい結果が、ひどいショットにはひどい結果がちゃんとついてくる。機械なのでクセもあるそうだが、さすが名門、難しかった。それでもCGもリアルで十分雰囲気は楽しめた。

店長に聞いたところ、ゴルフ場は48コースの中から選べるといい、架空のものが多いが、実在するゴルフ場もある。メーカーによってはもっとたくさんのゴルフ場でできるものもある。客層は30~50代の仕事帰りの男性サラリーマングループが7~8割。たまにカップルで楽しんでいる人もいるという。フリードリンクにしっかりした食事がついて4000円からコースがあった。

「飲む、打つ、食う」を楽しむ空間

ちゃんとした数字はわからないのだが、ゴルフバーは十数年前ぐらい前には都内にもかなりの数があったという。それが不況もあって相当数がつぶれていった。筆者が行ったような、ゴルファーを納得させられないレベルだったり、ゴルフをやることしか売りがなかったりしている店が淘汰されていったらしい。ちゃんとした機器を使い、食事などゴルフ以外でも売り物をつくっているところが、やはり生き残っている。

ゴルフは自然を相手にするスポーツなので、室内で楽しいはずはないという方もいるだろう。それはまっとうな考え方だ。ただ「ゴルフの楽しみ方を広げる」という意味では、シミュレーションゴルフも「あり」なのだと思う。

事実、店には会社の同僚と酒を飲み、食事をしながら、クラブを振って楽しんでいるグループがいる。2015年問題で団塊の世代が定年を迎えても、仲間と楽しめる場になるかもしれない。ゴルフ場と違って歩かなくていいから、体力的に気持ちがゴルフから遠のいている人にとっては楽だろう。もっとも飲みすぎないことだが。もっと進化して、風が吹いたり、雨が降ったりすれば……そんなことを考える人は、ゴルフ場へ行ったほうが絶対満足する。シミュレーションで自信をつけてから、外に出て行くという、ゴルフ場デビューへの新しい道があってもおかしくない。

「飲む、打つ、食う」の3つが同時にできる空間。そういえば「フラスコ」という、英国発祥の200ミリリットルぐらい入るウイスキーの携帯ボトルがある。かつて、寒いスコットランドでゴルフをする人はポケットに携帯ボトルをしのばせ、1ホールごとに1口ずつ飲み、18ホールでちょうどなくなるサイズになったという小話を聞いたことがある。昔からゴルフと酒には縁があったようだ。
 

赤坂 厚 スポーツライター

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あかさか あつし / Atsushi Akasaka

1982年日刊スポーツ新聞社に入社し、同年からゴルフを担当。AON全盛期、岡本綾子のアメリカ女子ツアーなどを取材。カルガリー冬季五輪、プロ野球巨人、バルセロナ五輪、大相撲などを担当後、社会部でオウム事件などを取材。文化社会部、スポーツ部、東北支社でデスク、2012年に同新聞社を退社。著書に『ゴルフが消える日 至高のスポーツは「贅沢」「接待」から脱却できるか』(中央公論新社)。

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