神社庁が統一地方選候補に送りつけた「公約書」 「LGBT理解増進法案」国会提出の機運に水を差す

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手元に「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟 役員一覧」(2021年7月)という資料がある。役員のうち、顧問に就いた甘利明氏や小泉進次郎氏、河野太郎氏、茂木敏充氏、副会長の小渕優子氏、幹事長の木原誠二氏、事務局長の井出庸生氏ら39人は、一方で、神政連の公約書に賛同・署名をして神政連の推薦候補にもなっていた。

「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟 役員一覧」(編集部撮影)

選択的夫婦別氏(姓)を早期に実現すべきだと主張する国会議員が神政連の公約書に賛同・署名している理由は不明だ。主張の一部に賛同できなくても、自民党支持者の中で、とりわけ保守的な票の獲得を期待してのことかもしれない。

賛成・反対派の両方に「良い顔」をする

一方の神政連は、選択的夫婦別氏(姓)に賛同する議員であっても、政治への影響力拡大のためにはこの点に目をつぶるということかもしれない。今回、統一地方選に向け都道府県議員レベルにも「公約書」の対象を広げたのは、LGBT理解増進法案の提出を控え、組織の引き締めを図る狙いがあるとみられる。

どちらにしても上記39人の国会議員は先の衆議院総選挙において、選択的夫婦別氏(姓)に関して賛成派、反対派の両方の有権者に「良い顔」をして当選したことになる。

では、最終盤に差しかかる今般の統一地方選挙の候補者はどうか。

東洋経済は神政連に対し「全都道府県の、どのくらいの数の県議候補、市議候補に公約書を送っているのか」を尋ねたが、「回答は差し控える」と答えた。

旧統一教会問題については安倍元首相の死去後、多くの国会議員や地方議員が教団のイベントに出席したり祝電を送ったりなどする代わりに国政選挙や地方選挙で強力な支援を受けていたことが発覚した。

旧統一教会と主張が似通う神政連の公約書は、どれだけの候補者に送られ、どの候補者が「賛同・署名」をして神社界の支援を受けているのか。実態はベールに包まれている。

候補者に関する十分な情報が開示されているか。そこにウソはないか。有権者は、実態を慎重に見極める必要がある。

野中 大樹 東洋経済 記者

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のなか だいき / Daiki Nonaka

熊本県生まれ。週刊誌記者を経て2018年に東洋経済新報社入社。週刊東洋経済編集部。

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