世界のエリートはなぜ3歳から哲学を学ぶか 日本的エリートの挫折と転換

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これは、ことさらに私が指摘するまでもなく、みなさんが日々の生活で実感していることだと思います。そもそも人生とは明確な正解のないことを「ああでもない」「こうでもない」と模索しながら歩むものです。

そのときどきで優勢になる考え方はあるものの、手探り状態で正解に近づこうと考え続けているわけです。これがまさに哲学に通じる思考法なのです。

哲学的思考は武器になる

日本は高度経済成長期を経て、いまや成熟国家になっています。高度経済成長期までは「1+1=2」という明確な正解がある「知識」を武器に、欧米をモデルにして敷かれたレールのうえを歩みさえすれば、ある一定の成功を収めることができた時代でした。

しかし、今は違います。国も個人も世界に目を向け、自らが主体的に答えを考え、ときには互いに意見を戦わせることが求められます。そこにしか、日本の未来はないと言っても過言ではないと私は思っています。そのときに武器となるものこそ、正解のない問題について考える「哲学的思考」なのです。

残念ながら日本の学校教育では、考える力を磨く教育がおこなわれていません。繰り返しますが、これからの時代は自分の頭で考える哲学的思考法が欠かせません。

この深い溝を埋めるためには、自分自身で哲学的思考法を身につけるしかありません。お子さんがいらっしゃる方であれば、それを家庭学習にとり込んでいくしかないのです。

先ほどのフランスの幼稚園の例にもあるように、哲学は難しいので子どもには早すぎるということはありませんし、何歳からでも遅すぎるということもありません。

子どもに哲学的思考法を身につけさせるには、まず親が哲学的思考法を身につける必要があります。(その方法は、著書『世界のエリートはなぜ哲学を学ぶのか?』で詳しく触れましたので、併せて参考にしていただければより理解が深まるかと思います)。唯一絶対の正解などないビジネスで活躍し、より幸せな人生を歩むには哲学的思考法が必要です。正解のない世界で問題を発見し、自ら解決していくことができる「考える力」をこれから身につけていきましょう。

では、始めます。

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福原 正大 Institution for a Global Society(IGS)代表取締役

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ふくはら まさひろ

学習塾Z会との合弁で、小中高生のための「英語を考えるリーダー塾」を展開する「igsZ」、ならびにグローバル人材育成の「Institution for a Global Society(IGS)」代表取締役。

一橋大学特任教授も務める。慶應義塾高校時代にニューヨークにホームステイしたことをきっかけに、世界を舞台に活躍することを心に決める。慶應義塾大学卒業後、1992年東京銀行に入行。
フランスの名門ビジネススクールINSEAD(欧州経営大学院)でMBA、フランスのグランゼコールHEC(パリ)で国際金融の修士号を最優秀賞で取得。筑波大学で博士号(経営学)取得。

2000年世界最大の資産運用会社バークレーズ・グローバル・インベスターズ入社。
欧米のトップスクール教授陣で構成されるグローバルチームで為替の研究と戦略を構築。
35歳にして最年少マネージングダイレクター、日本法人取締役に就任し、
ニューヨーク証券取引所でオープニングベルを鳴らす。2010年IGSを設立。

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