「KPIを妄信する人」にあえて教えたい負の側面 ツイッターの大量解雇が示す目標設定の無意味

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ただ、現実の世界で社長のご機嫌を損ねただけでクビにされてはかないません。KPIはそうした属人的な評価を排除するためにできた一定の合理性をもったシステムです。会社と合意したKPIを達成していれば、少なくとも成績不振を理由にクビを言い渡されることはない、社員にとって一種の安全装置でもあるわけです。

一方、ある程度合理的で客観的なKPIにもかかわらず、未達となった社員の末路はどうなるのでしょうか。

これが日本ならばせいぜい配置転換程度で済むと思いますが、海外では各部署が人事についての決定権を持っているので、他部署で不要になった人材を受け入れてくれることはまずありません。

これも「KPI達成に必要なリソースしか要らない」という考えと一致しています。どの部署も受け入れてもらえず、所属部署に居場所もない。ここへきて初めて「You are fired」になるわけです。

日本のシステムは従業員に安心感を与えている

日本がこうならない理由として、法的に解雇のハードルが高いこともありますが、それに加え人事が全社横断的な権限をもっているということもあります。それにより、ある部署で失敗しても、別の部署で再挑戦のチャンスを社員はえられます。

もう1つは、ジョブローテーション制度です。ある程度職能の多様性を社員に持たせるのが目的なため、他部署への異動がかならずしも「左遷」のような扱いにならないのです。こうしたシステムは、社員の側から見た時に安心して何かに挑戦するためのセーフティーネットにもなっていると思います。

反対にこうしたシステムは、KPIによる能力主義でふるいにかけ、パフォーマンスの高い社員で社内を固めたいと思っている経営者には「壁」のように思えるかもしれません。が、こうしたKPI至上主義的な考え方に対して、アメリカではむしろ社員のエンゲージメントを高めることを目的とした、興味深い変化が起きています。それについては後述します。

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