東日本大震災の想像を絶する避難所生活、劣悪な環境で感染症蔓延も

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着のみ着のまま避難 途方に暮れる外国人も

週刊東洋経済では3月26~27日の2日間にかけて、石巻赤十字病院や齋藤病院など石巻市内の医療機関、また避難所を訪れ、石巻市医師会長などの医療関係者や被災者から、医療や生活上の問題点について取材。そこで見聞きした事実は想像を絶するものだった。

被災者の中には、着のみ着のままで逃げたために、保険証や預金通帳、不動産の権利証などを失った人も少なくない。そうした人の多くは、自家用車も津波で流されたゆえ移動手段もなく、避難所でじっとしているしかないというありさまだ。

市内の高台にある、石巻中学校の体育館や教室に設けられた避難所(前ページ上写真)では、28日時点でも約600人が日々の生活を送っている。しかし、震災後に一度も風呂に入ることもできず、土足で体育館に出入りする不衛生な環境が続いてきた(3月末には土足禁止)。避難所では風邪が流行しており、せきの音が体育館内のあちこちで響いていた。

きちんと医療を受けていない人もいた。糖尿病を患う67歳の男性は、震災前はインスリン注射を打っていた。ところが震災後、それが不可能になった。避難所での食事は「おにぎりやパンばかりで野菜はほとんど取れない」(男性)。胃かいようを患う63歳の男性は、長期にわたって服薬ができなくなったことでかいようが悪化。最近になって、巡回する医師から薬の処方を受けることができるようになったばかりだという。

「やることがないので避難所で一日中ポカンとしている」と、この男性は語る。前出の67歳男性によれば、「避難所の同じ班の女性の多くはうつ状態になってしまっている」という。避難所には家族と離れ離れになった、フィリピン人女性の被災者が途方に暮れていた(下写真)。

 

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