子供がいない夫婦の「絆」は、どう生まれるか 結婚2年で「寝室も休日も別」の超達観夫婦

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30年後ではなく現状でも直面している課題がある。お互いの老親の世話だ。博之さんの父親は78歳で健在であり、将来は博之さんの長兄が一緒に住む見通しが立っている。一方の慶子さんの母親(68歳)も夫に先立たれて独り暮らしで、昨年は急病で倒れてしまった。慶子さんの妹は東京で夫と小さな子どもと暮らしており、地元の実家に頻繁に戻ることはできない。

「長女であり、子どもがいない彼女(慶子さん)が看病することになり、昨年の冬は月の半分ぐらいは実家にいました。僕のために料理を作り置きして実家に行き、週末になるとうちに帰ってくるような生活です」

子なし夫婦には、「第三者の協同支援」が必要?

ここに至り、博之さんと僕は「結婚して家族になるってどういうことだろうね」という根本的なテーマに行き当たってしまった。ちょっとワインを飲みすぎていたのかもしれない。僕は自分自身にも言い聞かせるつもりで、博之さんに思い切った助言をした。

子どもがいない夫婦の場合、ふたりきりではいつまでも恋人もしくは同居人の意識がぬぐえない。お互いの肉親を家族として大事にすることで、はじめて自分たち夫婦も家族になれるのではないか。博之さんの場合、健康面で不安のある義母との同居を決断することだ。同性である義父との同居に比べればうまくいきやすいと僕は思う。

慶子さんは博之さんに心から感謝をし、彼の父親を同じように大切したいと思うだろう。夫婦関係はこのように「大切にしたい第三者への共同支援」を通じて深まっていく気がする。

「(義母と)一緒に住むことは考えたことがありません。その覚悟は今も持てません」

3杯目のワインを空けながら、正直な気持ちを明かしてくれる博之さん。そうだよなあ。他人には無責任にアドバイスしている僕も、自分の気楽な生活を変えることはなかなかできない。

しかし、夫婦でちゃんと話し合って知恵を出し合えば、「家族全員が納得して安心して楽しく暮らせる」道が見つかるかもしれない。自分を変えずに、生活を少し変えることもできるだろう。その積み重ねが「30年後の大丈夫な夫婦関係」につながっていると信じたい。
 

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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