東京港で46位「日本の港湾」地位低下が激しい背景 コンテナ貨物取扱量は増加、でも世界順位は低迷

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さらに2010年度からは「国際コンテナ戦略港湾政策」が開始されています。基幹航路の寄港を維持・拡大することで企業の立地環境を向上させ、日本の国際競争力を強化するというもので、内航、トラック、鉄道によって主要港と各地方を結ぶ輸送ネットワークの抜本的な強化も方策に入っています。

なお、国際コンテナ戦略港湾は京浜港と阪神港に絞り込まれています。

日本の多くの港で輸出の促進が重要

国際コンテナ戦略港湾政策の下では、「民間企業が出資する『港湾運営会社』を設立し、『民』の視点による戦略的な一体運営の実現等により公設民営化等を通じ、国際競争力の強化を図ること」(国土交通省HP「国際コンテナ戦略港湾政策について」より)が目標に挙げられています。

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2014年に設立された阪神港の港湾運営会社「阪神国際港湾株式会社」や、2016年に設立された京浜港の港湾運営会社「横浜川崎国際港湾株式会社」には国からの出資が行われています。

ほかにも無利子貸付制度の対象施設を追加するなどの施策も取られ、「日本の港湾」の競争力の強化が進められています。2023年からは、国土交通省港湾局が国際コンテナ戦略港湾政策に続く施策の検討を開始しています。

なお、日本のコンテナ港湾は、消費財輸入の拠点、部品や製品輸出の拠点としてだけでなく、周辺の産業や雇用にとっても重要な役割を持っています。これら産業と連携して運営や開発を進めていくことで魅力ある港、そして港町が構築されていきます。

そのために1つのポイントとなるのは、輸出入のバランスがとれるよう、港湾政策と産業政策、さらには街づくりが連携していくことです。例外はあるものの、日本の多くの港では輸出の促進が振興のために重要になります。

松田 琢磨 拓殖大学商学部 国際ビジネス学科教授

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まつだ・たくま / Takuma Matsuda

筑波大学第三学群社会工学類卒業、東京工業大学大学院理工学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(学術)(東京工業大学)。専門分野は海運経済学、物流(国際・国内)。コンテナ輸送、市場と業界の動向、国内雑貨輸送に関して調査・研究を進めている。共著書として『新国際物流論 基礎からDXまで』(平田燕奈・渡部大輔との共著、晃洋書房)『日の丸コンテナ会社ONEはなぜ成功したのか?』(幡野武彦との共著、日経BP)、著書に『コンテナから読む世界経済』(KADOKAWA)がある。

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