エコキャップ詐欺?あのNPOの法的責任は 提供者は「泣き寝入り」するしかない?

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「キャップの売上をワクチン代として寄付していなかったのは、活動の趣旨に賛同してキャップを提供してきた人たちの善意を踏みにじっています。しかし、今回のケースは、立証という実務上の問題から、刑事責任、民事責任のいずれも追及しにくいものであろうと思われます」

田沢弁護士はこう切り出した。では、「詐欺」にあたらないのだろうか。

「刑法上の詐欺罪は、人を欺く「欺罔(ぎもう)行為」によって、財物をだまし取ることによって成立します(刑法246条1項)。

もう少し詳しく説明すると、

(1)「欺罔行為」により相手方が「錯誤」(勘違い)に陥る
(2)その「錯誤」を原因として、相手が「財産上の処分行為」を行う
(3)その結果、「財物の交付」がなされる

 

という流れが必要になります。さらに、(1)の前提として(4)相手をだまして、財物の交付を受けようという「故意」も必要です。

今回のケースで、「詐欺である」というためには、キャップが提供される前の段階で、(4)の「故意」およびこれに基づく(1)の欺罔行為が存在しなければなりません」

「詐欺」にあたる場合でも刑事責任の追及は難しい

では、「詐欺」にあたるケースはあるのだろうか。

「もともとワクチン代として寄付する意思でキャップの提供を募っていたけれども、実際にキャップが提供されたあとに、ワクチン代として寄付しないことに決めたという事情であれば、「欺罔行為」が存在しないことになり、詐欺にはなりません。

したがって、詐欺にあたるか否かは、ワクチン代として寄付しない意思があるにもかかわらず、寄付するように装ってキャップの提供を募り、ワクチン代として寄付されるものと信じた人たちが、実際にキャップを提供したという事実関係があるか否かにかかっているということになります。こうした事実関係があれは、詐欺にあたるケースもあるでしょう」

しかし、田沢弁護士は、詐欺にあたる場合でも刑事責任の追及は難しいと説明する。

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