ハーバード流「値上げで勝つ、負ける」戦略の差 ブランド力がなくても顧客満足度を高める方法

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しかし、ブランド力は企業のいままでの実績や顧客のもつイメージから構成されます。ここで注目したのが後者のイメージです。イメージが面白いのは、それが実力を反映しているとはかぎらず、たとえば、著名人が愛用している、権威ある機関に求められた、有名企業が採用した、といった事実があれば高いブランドイメージにつながり得るということです。

宣伝で使われるコピーがブランドイメージに直結する

たとえば、最近多くのメーカーの宣伝で使われるコピー、「モンドセレクション受賞」などもその例です。かつてあるメーカーの役員の方に聞いたのですが、そのメーカーの製品を売り出す際、モンドセレクション受賞というコピーを広告に記載するようにマーケティング部長から提案されたことがあったようです。その役員は、モンドセレクションはそこまで権威がある賞ではないのでやめたほうがよい、と反対したそうです。しかし、担当部長が強く主張したので結局折れてその通りにしたところ、これがヒットの大きなきっかけになったとのことでした。

ある納豆メーカーは「宮内庁御用達」という宣伝文句を謳い問題になったことがありました。というのは、その納豆は皇室に納められていたのではなく、宮内庁の職員食堂で使われていただけだったからです。確かに「皇室御用達」ではないので、嘘ではありませんが、誤解を招く表現でもあります。

自転車部品メーカー、シマノのブランド力が欧州で飛躍的に高まったのは、ツール・ド・フランスに参加するプロ自転車チームの部品として採用されたことがきっかけでした。シマノは、プロのチームに採用されるために多くの努力を注力していたのです。

賞や権威ある機関に採用されることでなくても、著名人が愛用しているというのも宣伝文句に使えます。数十の店舗を展開しているある接骨院は、店内に多くの芸能人やスポーツ選手を治療したということがわかるように、かれらの写真や推薦の言葉が所狭しと貼り付けてあります。またホームページには、医師などの専門家の意見も記載し、信頼性を高める工夫をしています。このようないわゆる社会的証明を提示することで信頼性を高め、ブランドイメージを向上させているのです。

WTPを高めるには、もちろん提供する製品・サービスの実力の裏付けがあることは必要不可欠です。それは最低限の前提条件ですが、それだけだと顧客には伝わりません。だからこそ、こうした錯覚価値、すなわち実力以外のところからくるイメージに起因する価値も同時に高めていくことでWTPをさらに高めていく努力が求められるのです。

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