東日本大震災で進む東北産離れ、不安払拭へ険しい道

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東日本大震災の発生から3週間。東北地方の農林水産業が受けた深刻な打撃の規模が明らかになってきた。

特に深刻な被害を受けた宮城県は30日、県に登録された20万トン未満の小型漁船のうち、約9割に当たる1万2005隻が大破・流出したとの調査結果を公表した。漁船の被害額は1022億円に上り、農林水産関係全体の被害額は、30日時点で8491億円に達している。

東北全体では農業の被害も大きい。農林水産省によると、岩手、宮城、福島の3県では津波により、約2万ヘクタールが浸水した。海水に浸った田畑では作物が育たず、復興するのは大規模な土地改良が必要。そのためには、莫大な費用と時間がかかる。

被害の深刻さに追い打ちをかけるのが、福島第一原子力発電所の事故による放射性物質の拡散だ。原子力安全委員会は3月17日に飲食物の摂取制限の指標を設定。野菜類は放射性ヨウ素が1キログラム当たり2000ベクレル、放射性セシウムが500ベクレルとした。

これを受けて政府は、福島、茨城、群馬、栃木、千葉の各県、東京都で食品のモニタリングを実施。21日から福島、茨城、栃木、群馬県で生産されたホウレンソウとカキナ、福島県産の原乳(絞りたての牛の乳)について、出荷停止を指示した。その後、対象品目も拡大した。

供給不足の不安より消費の急縮小が痛手

震災による大規模な被害は、日本全体の食糧供給にどのような影響をもたらすのか。

津波によって田畑が大きな被害を受けた岩手、宮城、福島に、北関東3県を合わせた農産物の生産シェアは17%弱。ホウレンソウだけ見ても、出荷制限の対象となった福島、茨城、栃木、群馬県のシェアは17・6%だ。

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