高浜原発再稼働に司法が運転差し止め仮処分 カギ握る4月22日の鹿児島地裁の判断

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仮処分は裁判所による暫定的な決定で、緊急性があり、長い時間がかかる訴訟では防ぐことができない権利の侵害を止めるための法的手続きだ。暫定的ながらも、いったん認められると、裁判所への異議や抗告による対抗手段を通じてその決定を覆さない限り効力が続く。その期間は数か月では終わらない見通しだ。

高浜3、4号は今年2月に、川内1、2号は昨年9月に、原子力規制委員会から新規制基準に適合しているとの合格判定をそれぞれ得た。高浜の場合、地元同意が必要となるものの、同4基はいずれも年内には再稼働すると見込まれていた。しかし、今回の仮処分決定で、その方針は棚上げとなった。

大飯原発については、昨年5月の判決を受けて関電が直ちに控訴し、現在は名古屋高裁金沢支部で争われている。判決が確定するまでは、大飯3、4号は原子力規制委の審査に合格すれば法的には再稼働は可能だが、まだ実現には至っていない。

原子力規制委は、今後、川内や高浜のほか、四国電力<9507.T>伊方原発3号や九電玄海原発3、4号などの審査合格に関する判断を年内にも出すとみられる。これに対し、河合弁護士ら反対派は、地域住民に呼びかけて今後も各地の裁判所に仮処分を申し立てる構え。政府が進める原発再稼働のシナリオが各地の司法の場でその是非を問われる展開が予想される。

原発に批判的な司法判断、定着は不透明

ただ、今後の原発関連訴訟で、樋口裁判長と同様の判断が示されるのかどうかは予断を許さない。元裁判官の瀬木比呂志・明治大学法科大学院教授は、今回の福井地裁の決定に対して「原子力規制委員会がゴーサインを出した原発に対して仮処分の(差し止め)判断が出たとは一定の重みを持つ」としながらも、「これに続くような決定がこれからどんどん出てくるとは思えない」と述べ、脱原発派には厳しい予想を示した。

原発再稼働に対する司法判断の流れを予想するうえで、次の焦点とみられているのが九州電力<9508.T>川内原発の再稼働差し止めを求めた仮処分申請の可否だ。同原発については、福島第1原発事故後に決まった原発新規制基準のもとで、昨年11月、全国で初めて地元同意の手続きが終わり、九電は今年7月の再稼働を計画している。鹿児島地裁は22日午前10時に、仮処分についての決定を出す。

担当する裁判官は前田郁勝氏。高浜原発に対する仮処分の流れを引き継いだ決定がでるか、あるいは申し立てが否定されるかは予想しがたい状況だ。

原発訴訟、電力自由化でリスクに

一方、関西電力にとっては、今年11月を前提にしてきた高浜3、4号の再稼働も不透明になってきたことで、収益面への打撃は避けられそうにない。

同社は大手電力9社の中で最も原発依存度が高い。それが裏目となって、同社は昨年12月に東日本大震災以降で2度目の電気料金の値上げを申請、2015年3月期も4年連続の赤字を見込んでいる。仮処分をめぐる法廷闘争が長期化すれば、来年4月からの電力小売り全面自由化を前に他の電力会社と競争する上でさらに重い足かせになりそうだ。

 

(浜田健太郎  編集:北松克朗)

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