東京、横浜「抜港」の元凶か?独気象庁の放射能粒子拡散シミュレーション【震災関連速報】

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東京、横浜「抜港」の元凶か?独気象庁の放射能粒子拡散シミュレーション【震災関連速報】

これが福島原発事故の海運業界への風評被害の「元凶」か--。日本郵船とコンテナ船のスペース(貨物輸送能力)を融通しあう業務提携関係、「グランド・アライアンス(GA)」を結んでいる独ハパックロイドが、寄港を予定していた東京、横浜、名古屋、神戸の各港のうち、神戸港や名古屋港に寄港し、他の寄港をしない「抜港」を行ったことが業界で大問題となっているが、その判断材料として、ドイツ気象庁(DWD)がホームページのトップページで動画配信する日本近海での放射能粒子拡散のシミュレーションが使われているのでは、との懸念が浮上している。

同HP(http://www.dwd.de/)によれば、たとえば4月3日午前0時には、浜松沿岸からアリューシャン列島までの広範囲の大気が放射能粒子に覆われている。これが事実ならば、放射能に汚染されることなく東京港や横浜港に寄港するのは不可能だ。

しかし、図の注記「重要なお知らせ」をよく読むと、「発生源の放射能濃度は分からない」と書いてある。また、「あくまでも気象条件に沿って拡散するであろうことを示したもので、帰納法的な推論を許すものではない」とのただし書きもしているほど。人体に影響のある水準かはさておいて、拡散予想図のみを掲載している格好だ。

海運会社の業界団体である日本船主協会によれば、「欧州中心に船員が日本への寄港を拒否したりしている。ドイツのオーナー(船舶保有会社)もかなり神経質になっているようだ。客観的な、科学的な数値を元に冷静に判断してほしい、と各国の船主協会にお願いをしているのだが」と困り切った様子。

たとえば、横浜市港湾局は、ホームページで放射性物質から放出されるガンマ線の測定値を1時間ごとに開示している(http://www.city.yokohama.lg.jp/kankyo/saigai/)。

「欧州の海運関係者に『新潟に寄港してはどうか』というと、『福島県の隣県で危ないのではないか』、といわれた事例もある」(船主協会)。そもそも日本の地理がよく理解されていないことも、風評被害の元凶の一因となっている可能性がある。

(山田 雄一郎 =東洋経済オンライン)

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