インデックス投資への「妄信」がなんとも危険な訳 20年どんな時も投資継続…本当にできますか?

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先ほどのシミュレーションでは約1230万円の積立でしたが、仮に2022年と同じペースで円安が進むと実質的に820万円程度の価値しかなくなってしまいます。なので、もし日本国内の投資商品のみにコツコツ貯めていても、思ったよりも増えなかったという事態になる可能性があるのです。

もちろん、アメリカなどの海外資産に投資していれば、円安によって円ベースの資産は増えます。逆に2010年代前半のように1ドル70円という超円高が起これば、結果は真反対に……。ただ、こればかりは誰にも予測できません。

「元本がマイナスでも現金化」は誰でも起こりうる

さらに、そもそも毎月3万円を継続して積み立てられるか?という問題もあります。20年もあれば、転職、引っ越し、出産、子どもの私立校への進学、家族の病気、親の介護など思わぬアクシデントによって、収入に余裕がない時期が起こってもおかしくありません。

このように、そもそも継続した積立自体が難しくなってしまう場合もあるのです。もちろん、月々数千円から投資をすることもできます。私自身も積立投資自体には賛成です。ただし、少額で積立を続けたとしても、まとまった資産を作るにはその分長い時間がかかってしまいます。

またアメリカ株をはじめ、株式市場がこれまでどおり上がり続けるという保証はありません。2000年のITバブル崩壊、2008年のリーマンショックなどでは、数年にわたって株価が高値(一定期間の中で一番高い値段)から50%を超えて下落する事態となりました。あなたがもしそのときに投資していたら、資産額が半額以下になるということです。

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そのような状況になると、コツコツ積立をしていても時間が経つごとにマイナスが膨らんでいきます。本当は投資すべき絶好な場面と知りつつも、あえて積立を止めてしまうことも十分ありえます。

もっと恐ろしいのは、元本全体がマイナスになっているときに急にお金が必要になったとき。そのときは損切りするような形で積立元本を現金化しないといけません。

もちろん、バランスに気をつけて資産を分散していれば大損は防げます。しかしその場合も先ほどお伝えしたように、少額の余裕資産での投資となりますので、まとまった資産形成には時間がかかります。

つみたてNISAとiDeCOなどで、皆がこぞってS&P500の積立をやっているから大丈夫という風潮がありますが、長期で資産をマーケットに投じる分、以上のようなさまざまなリスクが発生するのです。

児玉 一希 株式会社RES代表取締役

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こだま かずき / Kazuki Kodama

1991年生まれ。東京都立大学(旧首都大学東京)卒業後、2014年リクルートグループへ入社。しかし営業成績が最下位になるなどまったく活躍できず、2016年に転職をきっかけに金融教育業に携わる。直接的に指導した人数は2万名を超え、2020年に会社の代表者になってからは、自社でお金や投資を学べる学校を創設。投資家として大事にするのは「再現性」と「継続性」。

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