中南米の"問題児"ベネズエラをどうすべきか 米・キューバ急接近で孤立する可能性も

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米国による侵攻が差し迫っているとの危機感を高めようと、マドゥロ氏は軍事作戦に軍および民兵を動員している。昨年パナマは、米州機構の常任理事国定例会議でベネズエラの危機問題を話し合うよう要請した。これに対してマドゥロ氏は、パナマは自分を標的にした米国の「公然の陰謀」に同調したと非難し、外交関係を4カ月間断絶させた。

カギを握るキューバ

このアプローチが奏功し、マドゥロ氏は南米諸国連合の支持を獲得した。近々パナマで開催される米州サミットにはオバマ氏が参加し、キューバから初めてカストロ国家評議会議長も参加する予定だが、マドゥロ氏は、オバマ氏とカストロ氏が外交関係正常化に着手するのを邪魔しようとしているようだ。オバマ氏とカストロ氏が2国間協議に臨んで、互いの首都に大使館を置く交渉に入る可能性もあり、米国がキューバを、国際テロ支援国リストから外す可能性すらありうる。

だが、米国とベネズエラの政治的対立が極めて厳しい状況になれば、米国とキューバが外交関係を進展させるためには、ベネズエラ政権への無条件の支持をキューバが放棄することは必須となりうる。キューバが何としても投資、観光、貿易を呼び込もうとしている状況を考えると、この帰結は妥当だ。

ベネズエラに介入するか、チャベスの政治理念を支持するかという、厳しい選択を迫られているのはキューバだけではない。ブラジル、メキシコ、チリは、どちらの選択肢も支持していないが、キューバと米国の関係については、間違いなく緊張緩和を歓迎してきた。

中南米の主要国はもはや、ベネズエラの危機を無視し続けることはできない。無関心を決め込んでいられる時代は終わったのだ。

週刊東洋経済2015年4月18日号

ホルヘ・カスタネダ 米ニューヨーク大学教授

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専門は政治学、中南米・カリブ諸国研究。2000~03年メキシコ外相。

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