イオンによる子会社化はパルコのブランド価値を希薄化する--平野パルコ社長

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イオンによる子会社化はパルコのブランド価値を希薄化する--平野パルコ社長

都市型ファッションビルの先駆、パルコの経営が揺れている。イオンが2月22日、同社の株式12.31%を取得。3月17日に共同出店や役員派遣を含めた提携案を提示したのに加え、パルコの筆頭株主である森トラストとの協議を経て、25日には平野秀一社長の解任などを追加で申し入れた。

こうした提案に対し、パルコは29日に反対を表明。すると、31日には、森トラストがイオンに同調する形で、現経営陣の刷新を求める株主提案を提出した。5月に開かれる株主総会に向けて泥仕合の様相を呈し始めた、パルコの経営権を巡る争い。渦中の平野社長に話を聞いた。


--イオンからの提案は、どのような点で受け入れ難かったのでしょうか

イオンは2月末に当社の株を10%超取得されて、急に当社の経営の根幹に関わることを一気に申し入れてきた。そういうやり方そのものに疑問を持った。本来あるべき姿は、事業でシナジーの発現があって、お互いの信頼関係があって、それから資本の枠組みや体制をどうする、というのが普通のプロセスだと思う。

その中で、事業に関する提案について、具体性や実現性、効果がどうなのかとか精査しないといけない。たとえば、(イオンが都市型業態として展開している)ビブレ、フォーラスをパルコに統合するという提案があったが、2業態とも経営的に成功を収めているところは少ないと聞いている。われわれは地方の古い店を閉めながら、都市にフォーカスして経営効率を高めてきたので、統合してしまうと逆に当社の経営効率を下げてしまう。地方都市にたくさんパルコを出店することも、ブランド価値を希薄化すると判断した。

また、パルコで経験を積んできたのが、現在の経営陣。実績のあるわれわれを交代しろと言いながら、イオンはいままで都市型のSCをやったことがない。どうしてイオンがやれば当社の企業価値が向上するのか、そこのところが何も語られず、とにかく交代だと。それだけで見た場合、少数株主や社員、テナント、お客様が本当にプラスなのか、何も説明されていない。

--やり方さえ違えば、話し合いの余地はあったのでしょうか

われわれは去年策定した中期計画に基づいて、国内も海外もいろんな方とパートナーシップを組んで新たに事業を広げようと考えている。そういう意味では、門戸を閉ざして排他的にやっているわけではない。それがイオンだけの子会社で、となると状況は異なる。子会社というのは基本的には親会社に貢献することが子会社。イオンへの貢献が本当にパルコの従業員やお客様に良いことかというと、そうではないと思う。

--中期計画に掲げている都市部の強化や海外展開には、どこかの企業グループに属して資本力や信頼をバックにつけた方がいいのでは

都市部に関しては、目下、私たちに似たような業態でやられているところと水面下でパルコへの業態転換に向けた交渉を進めている。そのためにはどこかの傘下というより、ニュートラルな立場で話したほうが都市の開発はできるだろうと考えている。それに、イオンの開発は郊外の工場跡地が中心で、都市中心部に物件を持っていない。提案書にはイオンの不動産部隊は大きい、われわれの部隊だと都市部の開拓が進むと書いておきながら、私どもには都市の開発はこれからどうすればできるのかとおっしゃっていて、矛盾している。

海外においても、パートナーの絞り込みができていて、彼らは上海、北京を中心に十数件の物件を持っている。イオンは生活圏を中心に展開されているが、都市中心部の開発というのはこれまで事例がない。したがって、パルコ用に開発するといっても本当に蓋然性があるのかと問いたい。私たちはすでに物件を持っている相手とパートナーシップを組もうとしているので、もう少し契約内容を詰められれば、そちらの方が蓋然性は高い。

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