全員が作業服のトヨタ入社式。豊田章男社長が震災後初めて取材受ける

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全員が作業服のトヨタ入社式。豊田章男社長が震災後初めて取材受ける

トヨタ自動車は4月1日午前、愛知県豊田市の本社内で入社式を行った。今年度の新入社員は1335名(前年度は1250名)。主な内訳は事務職104名、技術職388名、業務職260名、技能職542名。なお、業務職のうち251名はトヨタ自動車で働いていた派遣社員のなかから採用されたメンバーだった。

トヨタ自動車では、東日本大震災の影響で愛知県と福岡県の2工場をのぞく全工場が完成車生産を止めている。入社式という晴れの日にもかかわらず、本社前の国旗と社旗は半旗で掲げられていた。昨年に引き続き、豊田章男社長以下の参列者全員が作業服で式に臨み、豊田章一郎名誉会長や奥田碩相談役ら重鎮も同様だった。

 豊田社長は、「今、日本はたいへんな状況だ。日本の復興に向け、その先にある、さらなる成長に向け、全力で立ち向かわなければならない」と挨拶。式典終了後には震災発生後初めて報道陣の取材に応じた。主なやりとりは以下の通り。

--3月27日に、東北の被災地に入った感想は。

不眠不休で働いている支援部隊への激励と、被災地の人への応援の気持ちをあらわすために現地入りした。(系列車体メーカーの)セントラル自動車の宮城工場やプライムアースEVエナジー、トヨタ紡織などの工場、また販売店や仙台港などの被災の現場をいろいろ見てきた。正直、行ってよかったと思っている。本社での対策会議には出てこない、本当の現場の状況、支援部隊のがんばりが「自分事」としてよくわかった。

--今後の操業再開の見通しは。

今回は東日本のタテ500キロ、ヨコ200キロにおよぶ地域が被災した。港湾、そして隣接しているコンビナート、そこに至る道路などのライフラインが壊れている。いままでのように被災した工場を復旧し、バリューチェーンを確保すれば立ち上がるということではない。被害のレベルの大きさは理解してほしい。一日も早い復旧を目指しているが、決して焦らずに取り組む。

--中部と九州、東北で国内生産の三極体制をつくるという方針は変わるのか。

三極をバランスよくやっていくという方向性に変化はない。可能性があるとすれば、
もう少し東北に力を入れていくということになるのではないか。

--東京電力、東北電力管内では電力不足が懸念されている。

自動車産業は裾野が広い。われわれがつくっている製品には、熱処理など電気が絶えず供給されてこそ初めて成り立つ工程もある。一日のなかで何時間かが計画停電されるのは、たいへんやりづらい。自動車業界あげて休業日を変えていくといったことも日本自動車工業会で議論しているし、経産省の指導もあおいでいきたい。

節電については、電力需要がピークになる夏場を控え、みなが考えるべきこと。自動車産業は影響も大きいので、率先垂範が必要だ。

--(震災発生直前の3月9日に発表し、早期の営業利益率5%達成などをうたった)グローバルビジョンを見直す考えは?

まったく考えていない。逆にグローバルビジョンを出しておいてよかったと思っている。今回は数値目標の設定は世界の各地域に任せ、ビジョン自体では数値によらない「思い」を前面に出した。2日後に震災に見舞われても会社がきちんと動いているのを見ると心強いし、これで経営していくしかないと実感している。

--震災被害の業績への影響は。

影響を受けることは間違いないが、現状ではまったくお答えできない。

西村 豪太 東洋経済 コラムニスト

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にしむら ごうた / Gota Nishimura

1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。現在は同社コラムニスト。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。

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