防衛大学校を志望する息子を翻意させたい 住環境やレベルを基に反対しても通じず

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私なら、息子にこのように伝えます。

「もし戦争が始まったら、近代兵器戦では勝者も敗者もなく、みんなが敗者になる(武器商人は別ですが)。武力行使はかえって危機を招くだけで、国が守れるとは思わない。戦争放棄をうたい、同盟国の戦争に巻き込まれない憲法を維持しつつ、いざとなれば自衛隊という実質的な軍隊で国防に当たるという制度下なら、自衛隊もいいかもしれない。

ただ、アメリカのアジア戦略変更の波に乗って戦争に積極的に参画できるようにする今の政策の流れの中で、状況は変わった。日本と無関係の戦争が始まっても参戦せねばならない今の状況で、防大志望は絶対反対だ。

それでも仮に戦争が始まり、激化してまた徴兵制が始まったとしたら、戦場では雑役係もいるだろうから、気の利かない息子の代わりに、母である私を連れて行ってくださいと訴えて、戦場で雑役係として働く。

私は、同盟国や敵国の、掛けがえのない息子や夫、父親や恋人や大切な友人である人をひとりも殺したくない。息子の代わりなら、私は喜んで撃たれる」

といったことを話すでしょう。

非現実的な話ですが、親から息子への訴えですから許してください。でも世界中の親の願いは、これが本音ではないでしょうか。

戦争は人が起こすものだから、人が止められる

「戦争は人が起こすものだから、人が止められる」これは、先の「ひめゆり」の生存者であり館長の島袋さんの言葉です。紅蜜柑さん、ひとりの母親としてできることは、息子を戦場へ絶対送らないと強く決意することです。キャリアの選択肢が狭まるとか、東大に行ったほうがいいのに、とか、靴磨きをしなくても、などとのんきなことを言っている場合ではありません。

今の政策の流れの中で”軍隊“に子どもが進むのを座視するのは、子どもが戦場に向かうのを親が傍観するのと同じであるように思います。私の大事な友人たちがたくさんいる自衛隊ですが、今の状況で、私なら息子の防大志願は反対です。

もちろん、防大にも自衛隊にも重要な仕事があり、立派な方が沢山いらっしゃいます。上に述べたのはあくまで私の価値観で、最後は息子さんご本人が決められることです。まずは頭ごなしに進路に反対するのではなく、最初に息子さんのお話を十分に聞きましょう。

同意する、しないは別として、いったん息子さんの思いを、敬意をもって理解しましょう。そして十分情報を与えて(母親のいうことを聞かない年齢であれば、息子さんに影響力のある人の協力も得ながら)、十分な覚悟の下、息子さんが後悔のない決断をされることを願ってやみません。


 

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ミセス・パンプキン 『最強の人生相談』『一流の育て方』著者

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立命館大学卒業。ビジネスパーソン向けの家庭問題・人間関係・人生相談の専門家として、東洋経済オンラインで2012年より執筆。最新刊は『最強の人生相談』(東洋経済新報社)。息子であり、『最強の働き方』(東洋経済新報社)の著者であるムーギー・キム氏との共著に、『一流の育て方 ビジネスでも勉強でもズバ抜けて活躍できる子を育てる』(ダイヤモンド社)がある。ミセス・パンプキンへの相談は、こちらのメール、あるいは相談受付サイトで受け付けています。なお相談件数多数につき、過去に類似する相談があった場合には取り扱いません。ぜひ、これまでの連載をご参照ください。男性からのご相談も歓迎しております!

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