4月「遺産分割ルール」変更で知っておくべき事 「特別受益」「寄与分」主張できる期間が10年に

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それと気をつけないといけないのが、上記の遺産分割ルールの変更は、2023年4月1日よりも前に発生した相続にも適用されるという点です。

ですが、2023年4月1日よりも前に発生した相続については実際には猶予期間があり、具体的には、原則、2023年4月1日から5年の猶予期間があります(但し、相続開始から10年を経過する時期が、2023年4月1日から5年より後である場合は、原則どおり相続開始から10年以内、という制限になります)。猶予の5年を長いとみるか、短いとみるか。日々忙しく過ごしていると、5年はあっという間です。

登記ルール変更、ポイントは「3年」

民法改正とあわせて不動産登記法も改正され、改正不動産登記法は2024年4月1日から適用されます。その結果、2024年4月1日から、相続登記に関するルールが変わることになります。

これまで、不動産の相続登記をいつまでにしなければいけない、という義務はありませんでした。しかし、今回の不動産登記法改正で、相続登記の申請に期限が設けられました。基本的義務として、亡くなった方の相続人は、相続により不動産の所有権を取得したことを知ってから3年以内に相続登記の申請をすることが必要になります。また、遺産分割成立時の追加的義務として、この相続登記の後になされた遺産分割により、法定相続分を超えて不動産を取得した相続人は、遺産分割の日から3年以内に、その内容を踏まえた登記の申請をすることが必要になります。

ですが、遺産分割がなかなかまとまらないからといって、2回も上記の登記申請をするとなると手間と費用の点で負担が大きいですよね。そのため、相続開始から3年以内に相続登記の義務を負う相続人が、法務局に「登記名義人について相続が生じたこと+自分が登記名義人の相続人であること」を申し出ることで相続登記義務を果たしたとみなされる「相続人申告登記」制度も新設されました。この相続人申告の方が、基本的義務の相続登記申請よりも必要書類が少なく、手続が簡単です。ですが、この相続人申告登記は、相続登記そのものではないため、遺産分割がまとまった場合には、登記申請が必要となります。

正当な理由がないにもかかわらず上記の申請をしなかった場合には、10万円以下の過料が科されることがあります。

なお、上記の登記義務のルールは2024年4月1日の前から相続登記をしていない不動産についても適用がありますが、猶予期間があり、原則、2024年4月1日から3年以内です。

本記事は改正民法や改正不動産登記法の相続に関連する概要を説明したものですので、個別事情を踏まえた相談は、弁護士等専門家にされることをおすすめします。

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宮川 舞 銀座数寄屋通り法律事務所 弁護士

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みやがわ まい / Mai Miyagawa

東京弁護士会所属。会社間の紛争を中心に、訴訟を多く手掛ける。また、『名誉毀損の慰謝料算定』(学陽書房)の執筆陣に名を連ねるなど、名誉・信用・プライバシー・肖像・パブリシティの侵害に関わる研究や事案に造詣が深い。弁護士による誹謗中傷対策 弁護士宮川舞公式サイト

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