カープ黒田投手がこだわる「もう一つの契約」 断ったのはヤンキースだけではなかった

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専修大学からプロ入りした黒田だが、もしドラフト指名がなければノンプロである日本生命への入社が内定していた。アドバイザリー契約を結んでいるSSK社と出会うきっかけだが、ドラフト前に日本生命のグラウンドを訪れた際、同社から声を掛けられた。これが、「ご縁」の始まりだった。

さて、その黒田が左手にはめるグラブにも〝隠し味〟があった。

メーカーを含め、すべての人々へ捧げる「2文字」

プロ野球選手には、その親指の位置にあたる表面に四字熟語など座右の銘を刺繍しているケースが多い。目立つことを嫌う黒田は、グラブに突っ込む左手の平らな部分に、その2文字を記している。

『感謝』―。

刺繍をした場合は汗で糸がほつれてしまうから、縫製する段階で職人がそこに刻印を押している。仮にそのグラブが使用できなくなっても、感謝の文字だけは残るようにと…。

黒田本人から注文を受けたSSK関係者は「ファンに感謝、家族に感謝、そして、大好きな野球ができることに感謝、そういう意味が込めているようです」と代弁する。

黒田は古巣カムバックを選択した理由について「最後はそこでマウンドに上がれば納得できると思った。日本で投げずに野球人生が終わったときに、何か引っ掛かるものがあるんじゃないかと考えました」と語った。

「ぼくに残された球数はそんなに残っていない。それを考えれば、今日が最後でも、っていう気持ちがあれば、もっと強く腕が振れたり、あと1球を投げれたりするんじゃないかと。この1球で終わってもいいというマインドを大切にしたいんです」

40歳の美学。再び日本の舞台に上がった不惑の男が、スポットライトを浴び続ける。

寺尾 博和 日刊スポーツ新聞社大阪本社編集委員

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てらお ひろかず / Hirokazu Terao

てらお・ひろかず 日刊スポーツ新聞社大阪本社編集委員。阪神、近鉄、南海、ダイエーなどを担当、野茂英雄のメジャー行きから現地に派遣される。2004年球界再編を取材、2008年北京五輪、09年WBCなど国際大会などで日本代表チームのキャップを務める。現在は主に東京五輪での野球ソフトボール復活を取材中。ミニストップ社とコラボでオリジナルスイーツ作り、オリジン社と弁当開発を手掛けて全国発売するなど、異色の名物スクープ国際派記者。大体大野球部出身。福井県あわら温泉生まれ。趣味はスポーツ、歌舞伎、舞台鑑賞。毎週木曜日にABC朝日放送「おはようコール」のコメンテーターとしてレギュラー出演。

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