JR北海道、青函トンネル事故に見えた教訓 地の底で直面したトラブルにどう向き合うか

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定点から地上に向かう斜坑には、ケーブルカーが設置されている。階段もあるが1317段。階段の長さで有名な香川県の金刀比羅宮(1368段)とほぼ同じだ。階段を上って地上に出るのは容易ではない。

また、青函トンネル内には、火災検知装置が上り下り併せ8カ所、煙検知装置が5カ所、地震計が8カ所設置されている。海底トンネルということもあり、異常出水を監視する装置も設置している。

地上に到着できたのは5時間後

札幌市内にあるJR北海道の本社(撮影:梅谷秀司)

それでは、今回の事故発生以降、どのような動きが取られたのか。

JR北海道によれば、特急「スーパー白鳥34号」の車掌が車両から火花が出ているのを発見したのは17時15分。竜飛定点から1.2キロメートル離れた場所で緊急停車し、発煙部分の消火を実施した。竜飛定点付近に設置されている火災検知器は車両の発熱は感知したものの、低温だったため火災との判断には至らなかったという。

17時37分から乗客の避難を開始し、列車から竜飛定点に徒歩で移動した。乗客は線路上ではなく、線路から離れた避難ルートを歩いたため、乗客の避難走行距離は2.4キロメートルだった。

18時20分にすべての乗客が竜飛定点に到着し、地上への出発に向けて待機した。その後、ケーブルカーに乗車して地上に向かったが、ケーブルカーの乗車定員が少なく、ピストン輸送を余儀なくされた。すべての乗客が地上に到着したのは、トラブル発生から5時間以上が経過した22時59分だった。

この状況を見てみると、トラブル発生から当座の避難施設である竜飛定点への到着まで1時間05分しかかかっていない。むしろ、長時間を要したのは、竜飛定点に到着してから地上に出るまでのプロセスだ。

JR北海道は「避難誘導のマニュアルどおり行動した」としている。同社のマニュアルには「トンネル内走行中に火災を発見した場合には、火勢、部位にかかわらず運転を継続し、トンネル、橋梁を避けて安全な場所に停車する」と記されている。JR東海など、ほかのJRも同様だ。

しかし、そうはいっても、世界一長い海底トンネルである。停止位置からトンネルの出口までは12キロメートルも残っており、停まらずにトンネルを抜けるには5分程度かかる。その意味では、今回のトンネル内停車はやむを得ない判断だったといえる。

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