「ロボットが自動走行して配達」が日常になる日 ロボと人間の"新しい関係性"とは?

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──人間の能力を拡張する存在としてのロボットをもっと暮らしの中に浸透させていくためには、どのような課題がありますか?

まずは、より多くの人がロボットがいる暮らしに価値を感じられる状態をつくっていくことが大事かなと思いますね。

その状態を実現するには、ロボットの力で何でも自動化すればいいというものではありません。暮らしの中で、ロボットがどんな存在であるべきかを想像することが必要です。

例えば、「コンビニのお弁当に食材を詰める」という作業1つとっても、すべてをロボットにさせようとすると大変です。でも、お弁当箱の規格を統一したり、おかずの種類・形を決めたりすれば、ロボットにすべて任せられるかもしれません。

そうやって作られたお弁当はどうしても画一的なものになってしまう。お弁当を食べる人にとって、作り手の工夫を感じられる盛り付けが楽しみの1つだとしたら、お弁当に感じる喜びや楽しみをロボットが奪ってしまうことになるかもしれません。

なので、われわれエンジニアにとって大切なのは、ロボットを直接的に利用する人はもちろんのこと、ロボットによって実現されるサービスを間接的に享受する人も含めた人間の感情にまで意識をめぐらせ、人間とロボットの関係性をデザインしていくことだと思います。

ロボットがいると私たちの暮らしがどうなるのか、それは幸せな世界なのか。そんな部分にまで想像力、そして妄想力を働かせて開発していく必要がある点は難しいところになってくると思います。

想像力を養う工夫は、使う側とのコミュニケーション

──安藤さん率いるロボティクス推進室のエンジニアの皆さんは、想像力を養うために普段どんな工夫をしていますか?

エンジニア自らロボットを使う側と丁寧にコミュニケーションをとり、ユーザーの反応や声を聞くようにしています。

例えば、ロボティクス推進室で開発している『cocoropa(ココロパ)』というロボットがあります。

孫が朝起きてきたときに『cocoropa』の頭を押すと、離れて住む祖父母の自宅の『cocoropa』が手を上げる。

祖父母は「おはよう」の気持ちを込めて『cocoropa』の頭を押すと、孫の『cocoropa』が手を上げるといったように、離れた場所にいる人と人が「共にいる」ような感覚で感情やコミュニケーションを交わせるロボットです。

機能としては手を上げるだけのシンプルなロボットですから、こうした製品を「買おう」と思って行動を起こすまでにはどんな仕掛けが必要なのか。

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