京阪8000系「プレミアムカー」だけでない贅沢空間 優先席も豪華、大阪と京都の中心結ぶ特急車両

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1989年秋、18年ぶりの新型特急として登場した8000系。デビューに先立ち、同年8月の社内報で当時の宮下稔社長は、テレビの設置や国内初の空気バネの採用など、それまでの京阪特急の特色を挙げ「これらはすべてご乗客の立場に立って最高の居住性を追求した結果であります」と説明。8000系に「歴代の京阪特急の輝かしい伝統を受け継ぎ、さらに充実発展させた車両であると自負いたしております」との期待を込めた。

のちに撤去されたが、5号車は「テレビカー」で電話ボックスのようなスペースまで設けてあった。現在はロングシートの後ろの窓の形状にわずかな形跡がある。

京阪電鉄8000系ダブルデッカー
4号車は1997年以降に組み込まれたダブルデッカー車(記者撮影)

その後も8000系は進化を続けている。運行開始時は7両編成だったが、1997年から翌年にかけて2階建てダブルデッカー車を増結、8両編成になった。導入時のパンフレットは「この度輸送力増強並びに旅客サービスの一環として、ご乗客の皆様に『夢のある車両』として8000系特急車両に増結するダブルデッカー車両を新造しました」と紹介、特急料金なしで小旅行気分が味わえるとアピールした。

豪華な座席にする事情

大阪の中之島線が開業した2008年からは、上が黄色、下が赤だった車体色を逆転して、現在のデザインに順次変更。車内には2010年以降のリニューアル工事で車端部のつり革とロングシートがお目見えした。2017年には6号車をプレミアムカーに改造して有料座席サービスがスタート。2018年以降は、車内の照明と字幕式だった種別・行き先表示器のLED化、補助電源などの更新を進めている。

京阪の広報担当者は「京阪線はカーブが多く速達性では勝負できないので、乗り心地にこだわった車両に力を入れている」と同社特有の事情を説明する。そのフラッグシップ車両である8000系には、伝統を守りつつ増築やリニューアルで付加価値向上を図る老舗ホテルに似た経営戦略が表れている。

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橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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