気配りできる上司こそ要注意の「慈悲的差別」とは 心理的安全性を高めるためメンバーとの接し方

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ただし、このとき気をつけたいのは、相手には事情があるからといって、「だからこうに違いない」と勝手に決めつけてしまわないことです。

たとえば幼い子どもを持つ母親でも、「子どものお迎えがあるから早く帰りたい」という人もいれば、「お迎えは家族に頼んであるから、残って仕事を片付けたい」という人もいるでしょう。同じ人でも日によって事情が異なるかもしれません。

相手の事情を確認せずに、「あなたには小さいお子さんがいるから、早く帰って」と決めつけてしまうと、相手によっては「子どもがいる人に大事な仕事は任せられない」というネガティブなメッセージとして伝わってしまうことがあります。

相手へ配慮したつもりが、かえって相手を傷つけてしまうことを、慈悲的差別と呼びます。忖度しすぎて慈悲的差別にならないよう、先入観をできるだけ持たずに相手の事情を把握することが大切です。

なんでも根掘り葉掘り聞くのもNG

僕は、仕事とプライベートを完全に分けることはできないと思っています。相手がどんな人で、どんな考えの持ち主なのかを理解するには、仕事とプライベートの間のグレーゾーンにも踏み込んでその人を知る必要があると考えます。

だからといって、プライベートな部分をすべてシェアする必要はありません。

相手のことを知るのは、あくまで一緒に仕事をしていくうえでの「トリセツ」を手に入れるのが目的です。人に知られたくないことまで根掘り葉掘り聞くものではないし、相手に自己開示を強要してもいけません。

僕自身は、かなりオープンに自己開示しているように思われているかもしれませんが、すべて見せているわけではありません。開示したほうが職場での相互理解が進んで心理的安全性に寄与する情報もあれば、そうでない情報もあります。

誰にでもその両方があるので、メンバーの話を聞く際はその辺の見極めも慎重であるべきだと思います。

ピョートル・フェリクス・グジバチ プロノイア・グループ株式会社代表取締役、株式会社TimeLeap取締役、連続起業家、投資家、経営コンサルタント、執筆者

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​Piotr Feliks Grzywacz

ポーランド出身。モルガン・スタンレーを経て、Google Japanでアジアパシフィックにおける人材育成と組織改革、リーダーシップ開発などの分野で活躍。2015年に独立し、未来創造企業のプロノイア・グループを設立。2016年にHRテクノロジー企業モティファイを共同創立し、2020年にエグジット。2019年に起業家教育事業のTimeLeapを共同創立。ベストセラー『ニューエリート』(大和書房)、『パラダイムシフト 新しい世界をつくる本質的な問いを議論しよう』(かんき出版)など著書多数。

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