WBCが「子供の野球離れ」を止める最大の希望の訳 イチロー活躍の第1回の優勝後は野球人気が復活

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WBCへの注目は2月17日、侍ジャパンの顔ぶれが宮崎キャンプに集結してから加速し始めた。契約の問題でMLB選手はキャンプに参加できないとされたが、エースでチームでも特別のステータスを持つダルビッシュだけは宮崎キャンプに参加し、若手選手を鼓舞してチームの結束を高めた。

MLBで12年目のダルビッシュの存在感は代表チームでも別格で、各チームのエースや主力打者もダルビッシュの発する言葉に耳を傾け心酔した。

2月末になると、大谷翔平、ヌートバー、吉田正尚が合流する。話題の中心は、大谷翔平に移った。3月5日までは試合出場できなかったが、練習に大谷らが参加することでチームはさらに活気づいた。

ダルビッシュ有はこの時期から、あまりメディアに目立つ発信をしなくなる。大谷が話題の中心に来るように配慮したのだろう。このあたりもベテランらしい気配りだ。

大谷翔平が披露した巨大なアーチ

大谷翔平が最初に周囲を驚かせたのは、試合ではなく練習だった。名古屋のバンテリンドーム、大阪の京セラドームでの試合前のBP(打撃練習)で、大谷は外野スタンドの上段に突き刺さる大飛球を連発した。140mとも150mともいわれる巨大なアーチは、NPBの試合前の練習ではめったに見られないものだった。これを聞きつけたファンは、試合開始の2時間以上前から詰めかけた。

その大観衆の前で、大谷は1人、異次元の打棒を披露し続けた。観客席からは巨大な溜息のような声が巻き起こるようになった。

大谷翔平はMVPを獲得し、サイヤング賞の候補にもなった。今、まさに「全盛期」を迎えようとしている稀有な二刀流選手だ。そんな選手が、日本のファンの前で日本選手と共に真剣勝負の試合に臨むのは、WBC以外ではありえない。ファンは、大谷の大飛球を目の当たりにしながら、その歴史的な幸運をかみしめていたはずだ。

そしてWBCの本選が始まると、話題の中心は大谷ではなく、アメリカから来た25歳の若者、ラーズ・ヌートバーへと移った。彼はリードオフマンとして安打や四球で出塁し、果敢に走塁した。またダイビングキャッチを2度も成功するなど、攻守で期待を超える活躍をした。両親や祖父も駆けつけ客席で応援した。

安打を打った後、塁上で見せる「ペッパーグラインダー」も、大谷翔平などチームメイトが真似をして、瞬く間に広がった。

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