くら寿司への迷惑動画「逮捕」だけで喜べない理由 迷惑行為を撲滅する道のりは始まったばかり

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また、実行者だけでなく撮影者や同席者も逮捕された理由や、それぞれの罪や責任の重さを伝える報道も必要でしょう。人々の興味を引きつけ、怒りをあおるような報道は、メディアにとって都合がいいだけのものにすぎません。

一方、メディアだけでなく、それを見る側の人々も、興味本位で見たり、他人事のように遠巻きで見たりするのではなく、前述したような罪や責任の重さ、環境の変化や生活の苦しさなどを具体的に報じたものをSNSで拡散し続けていきたいところ。「けしからん。厳罰にしろ!」と感情的に断罪するのではなく、「昔からあったものが可視化しただけ」と斜に構えるのでもなく、自分たちの手で模倣犯・類似犯を減らすような動きにつなげていきたいのです。

令和の今、刑事や民事での罪や責任を負うのはもちろん、人々からネット上で社会的な制裁を受けてしまうこと。「注目を集めたかっただけ。ちょっとしたイタズラだっただけで悪気はなかった」は、まったく情状酌量の余地がないこと。ほとぼりが冷めたあとも、厳しい人生が続いていくこと。ネット上を中心にたくさんの具体的な判例を共有することで、健全な社会につなげていきたいところです。

たとえば、「迷惑動画のベースになっている」と言われる迷惑系YouTuberたちも、人々とメディアが、そのような対応をしていたら、一連の迷惑動画は半減していたかもしれません。彼らを「目立ってうらやましい」「ある意味、人気者でありスター」と感じてしまう人が生まれづらい状態をどう作っていくのか。メディアとわれわれ1人ひとりの行動にかかっているのかもしれません。

SNSの運営サイドへの働きかけも

今回ここまでの経緯は、くら寿司が迷惑動画を確認して被害届を提出し、さらに「当社のカメラシステムなどを活用して収集した情報を提供するなど全面的に捜査に協力」。そして、警察が3人を特定して逮捕という流れでした。

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