コーヒーのおいしい街は、幸福度が高い? 道玄坂の人気コーヒースタンドが目指すこと

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 5
拡大
縮小
渋谷・道玄坂「アバウトライフ コーヒーブリュワーズ」の坂尾篤史さん
All Aboutカフェガイドの川口葉子氏が個性の光るとっておきのカフェを、豊富な写真とともに紹介していく連載。第4回は渋谷・道玄坂の「アバウトライフ コーヒーブリュワーズ」をご紹介する。

 

2013年に奥沢の小さなロースタリー&カフェ「オニバスコーヒー」を取材したとき、当時20代だったオーナーの坂尾篤史さんは、“有言実行”を生き方の基本にしていると語っていた。「これまで口にしたことは、だいたい叶ってきました」。叶うという言葉には受動的な印象があるが、多くの人々の友情と協力があってこそ、という意識がその表現を選ばせたのだと思う。

その当時の目標は、もう1軒、新しい店舗を出店することだった。まだ具体的に動き始めてはいなかったが、坂尾さんはスペシャルティコーヒーを広める必要性を痛感していた。落ち着いた住宅街である奥沢には、コーヒーへの関心が高い人々が一定数いるものの、経営はまだまだ厳しかった。

「もっと多くの人にスペシャルティコーヒーのおいしさを知ってもらわなければ。新しいコーヒー文化は、同じ方向を目指すコーヒー店が50軒、100軒と出てこなければ生み出せないと思う」

3つのロースターの豆を並べる試み

渋谷・道玄坂にある「アバウトライフ コーヒーブリュワーズ」

2014年5月、坂尾さんは渋谷・道玄坂に「アバウトライフ コーヒーブリュワーズ」をオープンした。有言実行である。

テイクアウト主体のこのコーヒースタンドは、画期的な試みを行っている。通常、ロースターが経営するコーヒーショップは自店で焙煎した豆だけを扱うが、ここにはオニバスコーヒーも含めた合計3つの小規模ロースターの豆が並んでいるのだ。お客は好きなロースターの豆を選んでコーヒーを注文することができる。

「アマメリアエスプレッソ」と「スイッチコーヒートーキョー」。坂尾さんがフレンドシップロースターと呼んで豆を取り扱うこの2店は、いずれも東京の住宅街に地域密着型の焙煎所を構え、若手オーナーが熱意をもって焙煎に取り組んでいる。それぞれの街でスペシャルティコーヒーの魅力を発信する仲間たちだ。

一貫して大切にしてきたのは、コーヒーのクオリティと、人と人のつながりだ。「スペシャルティコーヒーはまだ歴史が浅く、過渡期にある。同業者たちはみな手探りで進んでいるので、お互いに情報をシェアして協力していきたい」。

人生に行き詰まりを感じたときは、外に出て人と会う。その積極的な行動がいつも坂尾さんに転機をもたらしてきた。出会った人と友達になるコツは「自分をさらけ出すこと」。「外に出る」の中には、日本の外へと出ていく放浪の旅もある。

次ページ3度の旅が人生を変えた
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT