「部下から嫌われる上司」が見落とす"3つの視点" 「やる気を引き出す上司」は必ずやっている

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②基準教育とは 

次に、基準教育とは、「どの状態に持っていけばゴールなのかを教える教育」のことです。

「この状態がゴールだよ」と、仕事の達成基準を教えてあげます。達成基準なんて聞くと難しそうに感じるかもしれませんが、なんのことはありません。仕事が達成された状態を伝えてあげればいいだけです。

たとえば、先ほどの窓掃除、仕事を達成した状態とは、どんな状態でしょうか。

同じように窓を拭いているようで、何も言わなければ仕上がりは人によって差が出ます。正面から見たらきれいな窓なのに、斜めから見たら拭きムラだらけ。これでは仕事が終わったとは言えませんよね。

どの角度から見てもピカピカな状態に磨き上げるというゴールを示すことで、人による仕上がりの差をなくすことができます。

仕事は、手順を進めるだけでは完成しません。ちゃんと達成基準に向けて完了しなければいけないのです。 

手順だけ教育、基準だけ教育 

ここまでで、手順教育と基準教育の違いは理解できましたか?

わかっている人にとっては当たり前のこの2つの教育、意外と両方できているリーダーは少ないのです。

とくに、手順だけ示して基準を示さない事例は本当に多いです。 

「窓はこうやって掃除するんだよ」 
「議事録はこうやってとるんだよ」 
「資料はこうやって作るんだよ」

そうやって手順を示せば、とりあえず部下は仕事を進めてくれます。

ところが、手順がわかったとしても、どの状態を目指せばいいのか、つまり「仕事のゴール=基準」がわからないので、その仕事がうまくいったのかどうか、部下は自分で判断できません。

したがって、手順どおりにやったとしても、仕事の品質基準が低くなったり、逆に過剰品質になって時間がかかりすぎたりします。

その結果、多くのムダが生まれます。

逆に、基準だけ示して、やり方は任せるという、丸投げに近い教え方。いわゆる「見て盗め」スタイルは、昔の職人さんがまさにこのイメージです。

この育成方法にはメリットはあります。

部下が自分で考えて動くようになったり、手順を自分で設計できる主体性と能力が身についたりするのです。

しかし多くの場合、育成に必要以上の時間がかかります。

なので、基本的には手順と基準は両方教育したほうが育成スピードは早くなります。

では、もっとも重要でありながら、もっとも抜けてしまいがちな3つめの教育を紹介しましょう。

③なぜの教育とは 

なぜの教育とは、仕事の目的を考えさせる教育のことです。 

・なぜ、この仕事をするのか 
・なぜ、窓を掃除する必要があるのか 
・なぜ、議事録をとる必要があるのか 
・なぜ、資料を作る必要があるのか 

この理由を教育できているかどうかが、部下の長期的な能力を伸ばす最重要項目なのです。

なぜの教育が重要である理由。それは、仕事には「有意味感」が必要だからです。有意味感とは、その仕事に「意味がある」「価値がある」と感じることです。

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