元徴用工問題・日本が受け入れ可能な案が出た背景 関係国は解決案を評価するがさらなる争点も

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今回の発表の核心は、第三者による「迂回賠償」ということだ。韓国国内の財団が第三者として損害賠償訴訟の被告となった日本企業に代わり、判決による賠償金と遅延利子の約40億ウォン(約4億円)を支給することになる。

民法第469条は第三者も債務を弁済できると規定されている。第三者弁済がなされれば、債務は消滅する。これにより確定判決を受けた元徴用工や遺族が財団が支給する賠償金などを受け取れば、日本企業の債務は消滅するというのが韓国政府の判断だ。

しかし、問題は第三者債務弁済には「当事者の意思」という前提条件が求められるという点だ。これには、「日本企業が債務を認めていない」という点がネックになりうる。

キム・ジョンヒ弁護士は「第三者弁済に反対する元徴用工がすでに存在し、これまで債務を認めていない日本側の立場を考慮すれば、第三者弁済というやり方は当事者の意思にすべて反することになる」と指摘する。

「供託」で収まるか

ただ、大法院判例は第三者が法律上の利害関係にある場合、当事者の意思と関係なく弁済できるとなっている。この部分は今後、財団の性格をめぐって法的争点になりうるという見方がある。

キム・ジャンチョン弁護士は「政府の財団が日本企業と利害関係がある第三者としてみなせるかどうかが問題だ」と指摘する。これまで、元徴用工裁判で下された判決は4件。このほかにも9件が大法院で係留中であり、2審では4件、1審では53件ある。

法曹界では、これら訴訟で争われている賠償金は少なくとも150億ウォン(約15億円)とされている。訴訟の原告では1000人を超える。

財団は第三者弁済に反対する元徴用工には、賠償金を「供託」する手続きを行う予定だが、これもまた争点になりそうだ。財団は賠償金を裁判所に供託するが、元徴用工は強制売却を進めてほしいと要求する権利があるためだ。

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