数分で完売「カフェタナカのクッキー缶」の正体 名古屋で1963年創業の喫茶店がカフェに転身

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とはいえ、病を乗り越えたおかげで身体も心もリセットすることができた。とくに食べたものが栄養分となり、身体へ吸収されていくことを実感した。以前にも増して食材にこだわるようになった。ただ単によいものを選ぶだけではなく、現地で生産者の収穫を手伝ったりする中で彼らがどのような思いで育てているのかなど食材の背景にあるストーリーも受け止めながら、お菓子作りに取り組んだ。

個包装では味わえない喜びがクッキー缶にはある

ここでクッキー缶に話を戻そう。缶を開けると、甘い香りが鼻孔をくすぐる。そして、缶の中に整然と並ぶクッキーを見ているだけで幸せな気分になる。個包装では味わえない喜びがクッキー缶にはあるのだ。しかも、クッキーの1枚1枚に田中さんのこだわりがギュッと詰まっている。

「子どもの頃、生まれてはじめて作ったお菓子がクッキーという方も多いと思います。材料を混ぜればできる、みたいなイメージもありますが、粉とバターと砂糖のシンプルな素材をいかに空気を纏わせながら混ぜ合わせていくかなんです。その温度やタイミングも気を配りますし、しっかりと火入れをして美味しさを凝縮させるのも重要です。この1枚の中にいろんな世界観を表現することができるのです」(田中さん)

趣向を凝らした7種類のクッキーが詰められた定番商品「シュクレ」(カフェタナカ提供)

定番商品「シュクレ」には、アーモンドとハチミツを黄金色にじっくりと焼き上げたフロランタンと、エクアドル産チョコレートの味と香りが楽しめるざっくり食感のディアマン・ショコラ、ココナッツとアーモンドの生地を焼き上げたサブレ・ココなど全7種類のクッキーが詰められている。

どれも過度な甘さはなく、素朴な味わい。やはりバターや小麦粉、アーモンドなどの素材感が際立っていて、ひと口食べるごとに丁寧に作られていることが伝わってくる。

「クッキー缶はフランス菓子の伝統と日本の贈りもの文化の融合だと思うのです。季節ごとのクッキーのイメージや缶の色を考えたりするのが私にとって、とても楽しくて幸せな時間なんです」(田中さん)

「RÉGAL DE CHIHIRO」のクッキー缶は、本店やジェイアール名古屋タカシマヤ店、阪急うめだ本店限定缶や、クリスマスやバレンタインなどのイベント限定缶もある。さらにクッキーにとどまることなく、クッキー缶に詰め込んだジェラートやショコラも用意している。それらをコーヒーや紅茶に添えるだけでティータイムが豊かなものになるだろう。もうすぐ迎えるホワイトデーに大切な人へ贈ってみてはいかがだろうか。

永谷 正樹 フードライター、フォトグラファー

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ながや まさき / Masaki Nagaya

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。

地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに記事と写真を提供。

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