人気で切符入手難「ラオス鉄道」誰が乗っている? 中国「ゼロコロナ」政策転換でさらに増えるか

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筆者の乗車していた号車の一角にはごっそりと空席があったが、当駅からもタイ人の団体観光客が乗車し、席は埋まってしまった。列車の発車を見送り、貨物列車を撮影したかったものの、ホームに常駐している警察官にホームから追い出されてしまった。駅前は閑散としており、乗り合いのソンテウ(トラック型の小型バス)が列車を降りた客を乗せて出てしまったら本当に足がなくなる。乗り場へ急ぎ、ビエンチャン行きのミニバスに乗りたいと伝え、出してもらう。

バンビエン駅前のソンテウ
バンビエン駅前で客待ちするソンテウ(筆者撮影)

帰りのミニバスのチケットは10万キープ(約810円)。つまり、高速鉄道とほとんど変わらない。よく見るとチケットカウンターには行先別の運賃表があるが、肝心の料金が白い紙で目張りされており、見るからに最近貼られたばかりという感じだ。ラオスはこのところの世界情勢から通貨安が進んでいる。政府の外貨準備が不足し、一時的に市中に出回るガソリンも減って入手困難な状況も発生していた。おそらく直近で運賃が相当変動しており、表示できないのだろう。

10万キープという価格は法外な金額を吹っかけられているように見えるが、正当な運賃である。ミニバスはさらに北部からやってきて、車内はほぼ満席。外国人は筆者のみだ。その後も集落ごとに客を拾い、はたして夕方までにビエンチャンに着くか心配になったが、気づけば高速道路を走っており、バンビエンを出てから3時間10分、高速鉄道の3倍以上の時間をかけてビエンチャンの北バスターミナルに到着した。

ラオスの不可欠なインフラに

高速鉄道が「丸1日の道程をわずか4時間に短縮した」のは大きなインパクトだが、単に所要時間だけでなく、公共交通が脆弱なこの国において、国の管理のもと明確かつ低廉な料金で時刻通りに走る鉄道は、外国人にとっても本当に心強いものである。事実、開業後1年間の利用者は想定の倍近い伸びを示しており、閑古鳥が鳴くだろうという下馬評を出だしから覆している。

ラオスの経済が発展し、今後、国内での移動需要が活発化すれば、この国にとってLCRは欠かせないインフラになることは間違いない。コロナ禍明けの抜本的増発により、LCRは中国、ラオス、そしてタイを結ぶ物流の大動脈として大化けする可能性を秘めていると言えるだろう。

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高木 聡 アジアン鉄道ライター

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たかぎ さとし / Satoshi Takagi

立教大学観光学部卒。JR線全線完乗後、活動の起点を東南アジアに移す。インドネシア在住。鉄道誌『鉄道ファン』での記事執筆、「ジャカルタの205系」「ジャカルタの東京地下鉄関連の車両」など。JABODETABEK COMMUTERS NEWS管理人。

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