日経平均への「下落圧力」がジワジワ強まってきた 楽観すぎたアメリカ株の調整に日本株も追随へ

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ただし、これも前回の当コラムで指摘したように、(1)→(2)の相場つきの移行は、ある日からきっぱりと進むわけではなく、材料や市場心理が揺らぐことで、(1)と(2)の間を何度も行ったり来たりするし、(1)と(2)がほぼ同時に入り混じることもある。

直近は「逆金融相場」「逆業績相場」の様相

先週も逆金融相場の色合いが濃く残った。具体的な材料としては、例えば24日に発表されたPCE(個人消費支出)デフレーターが挙げられる。これは物価指標の1つで、個人所得・個人支出統計から算出されているものだ。この統計における個人支出の品目について、どの程度物価が上がっているかが示されている。

アメリカの連銀はCPI(消費者物価指数)よりも、このPCEデフレーターを重視しているとの見解がある。というのは、CPIの正式名称は「The Consumer Price Index for All Urban Consumers (CPI-U)」と呼ばれ、Urban(都市)の物価だけから算出されているからだ。これに対してPCEデフレーターは、全国ベースの統計なので、全米の物価動向を推し量るにはPCEデフレーターのほうが優れていると連銀が考えているのではないか、という説だ。

したがって、金融政策の先行きを予想するうえで、CPIよりPCEデフレーターに注目する投資家も多い。そして、24日に発表された1月のPCEデフレーターの前年同月比は5.4%上昇と、昨年12月の5.3%上昇を小幅ながら上回ったことから、インフレ対策としての金融引き締めが一段と進むとの懸念が市場に広がった。

先週は同時並行的に、逆業績相場の様相も見いだせる。21日には、小売企業のホーム・デポやウォルマートが決算を発表し、両社の2024年1月期の収益見通しが失望を呼んだ。

個人消費については、季節調整のいたずらで、1月分の雇用統計や小売売上高の前月比が持ち上がっていたため、市場では根拠の薄い景気楽観論が広がっていた。しかし、この両社の慎重な収益見通しが、個人消費の先行きはそう明るいものではないという「事実」を市場に突きつけたといえよう。

このように「2つの相場つき」(逆金融と逆業績)が入り混じりながら、今後も株価が押し下げり続けると警戒される。

なお、この2つのうち、先週はどちらが優勢であったかといえば、金利先高懸念だろう。それは、アメリカの10年国債利回りが一時3.98%と4%の大台に迫り、それがドル円相場を1ドル=136円台半ばに押し上げたことに表れている。ただ、どちらの相場つきでも株安につながるため、「今年央までにNYダウは3万ドル近辺に下落する」との筆者の予想は、まったく変わっていない。

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