オンワード、「中流の上」狙いが苦戦のワケ 経産省出身の40代新社長が放つ打開策とは?

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直営店の「23区GINZA」には多くの訪日外国人が来店(撮影:今井康一)

「セール時期に価格を下げても、売れない商品は売れない」。国内アパレルメーカー最大手・オンワードホールディングスの中核会社、オンワード樫山の馬場昭典社長のこの言葉は、同社の苦境を端的に表している。

2014年4月に消費税率が5%から8%に引き上げられた。だが、高級輸入ブランド品に関しては、株高などの資産効果が効いて売れ行きは好調だ。また、ユニクロに代表される低価格のSPA型(製造小売)企業の商品は、依然として節約志向の若い消費者から支持されている。

一方、オンワードをはじめ、国内アパレルメーカーが得意とするハイエンド&モデレート、いわゆる「中流の上」をターゲットとした商品は、中途半端なポジショニングといわれ、苦戦している。冒頭の馬場社長の発言に見られるように、セールなど多少の値下げ程度では消費者は買いに動かなくなっている。

大幅営業減益からどう巻き返す?

同社の2015年2月期業績は、期初時点で2014年2月期比30.5%増の営業利益123億円を見込んでいたが、期中に2度の下方修正を発表。着地はさらにその数字を下回り、同43.8%減の57.3億円まで落ち込んだ。

今2016年2月期の営業利益は、前期比57.0%増の90億円を計画している。一見、急回復に思えるが、きもの事業など不採算事業からの撤退、前期膨らんだオフィスの移転費用の減少などが主な要因で、2期前の営業利益102億円にも届かない。売上高は6.2%減の2640億円見通しで、実態としては苦戦が続く。アパレルは、セール時期までの期間に正規価格でどれだけ販売できるかによって業績が大きく左右される水物商売でもあり、前期のように業績がさらに下振れする可能性もある。

それでも、オンワードは「ハイエンド&モデレート」路線を堅持する構えだ。その理由として廣内武・オンワードホールディングス会長は、「ハイエンド&モデレートは、日本が独自に形成してきた他国にはないマーケット。そこで蓄積してきた強みを生かして世界に発信していきたい」と言う。

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