東名阪で一番運賃が安い鉄道会社はどこ? 初乗りはJR西日本、20km乗車なら東急

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最後に京阪神交通圏を分析してみよう。中京交通圏と同様に、JR西日本の運賃は他社と比べて安価な傾向にある。

京阪神で「20km最安」は阪急・阪神

特にJR西日本の初乗り運賃の120円は、首都交通圏、中京交通圏の各社と比較しても最も安い。

とはいえ、この金額の運賃での利用客が多数存在すると考えられる大阪環状線では、都心を行く高収益路線でありながら、長らく新車の導入が見送られ、1960年代に製造された電車が営業に就いていたほどだ。他社に合わせて初乗り運賃を150円程度に設定しておけば電車の更新はもっと早く実現していたのかもしれない。

初乗り運賃、そして乗車キロ5・10・15キロメートルで最安のJR西日本を退け、乗車キロ20kmでは阪急電鉄、阪神電気鉄道の280円が最も安くなった。

特に阪急電鉄の場合、初乗り運賃と乗車キロ20キロメートルの運賃との差額が130円と少なく、首都交通圏の相模鉄道とトップタイを記録している。同社の平均輸送キロは14.1キロメートルであり、東京急行電鉄の特徴についての説明と同じく、平均輸送キロを大きく上回る長距離の利用客に対しては比較的安めの運賃を提供しているのかもしれない。

阪急電鉄とは逆に、南海電気鉄道は乗車キロ20キロメートルでの運賃が最も高い。440円という金額は首都交通圏、中京交通圏を含めても最高である。南海電気鉄道の平均輸送キロは16.3キロメートルと、阪急電鉄よりも2.1キロメートル上回るだけ。同社の場合、短距離の利用客があまり多くなく、平均輸送キロ前後の営業キロの利用客が支払う運賃によって、営業収益の大多数を確保していると考えられる。

梅原 淳 鉄道ジャーナリスト

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うめはら じゅん / Jun Umehara

1965年生まれ。三井銀行(現・三井住友銀行)、月刊『鉄道ファン』編集部などを経て、2000年に独立。著書多数。

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