東名阪で一番運賃が安い鉄道会社はどこ? 初乗りはJR西日本、20km乗車なら東急

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一方、東京急行電鉄は乗車キロが5・10・15キロメートルとなると運賃は最安ではなく比較的大きな上昇幅を示すものの、20キロメートルになると運賃は首都交通圏最安に返り咲き、小田急電鉄は両社のほぼ中間に位置する。3社の運賃は平均輸送キロを踏まえたものと考えられ、9.6キロメートルの東京急行電鉄では乗車キロが20キロメートルという利用者があまりいないので、安く設定できるのかもしれない。

一方、同じ首都圏でも、横浜市交通局の運賃は、今回比較した初乗り運賃、5キロメートルおきの営業キロとすべてにおいて最高額となった。

莫大な建設費を要する地下鉄は、開業から日の浅い路線を抱えているほど減価償却費が重くのしかかる。同市交通局の場合、2012(平成24)年度の減価償却費は153億8168万7000円で、382億5975万1000円の営業収益に占める比率は40.2%に達し、首都交通圏の他社の20%前後と比べると2倍近い。この比率は三交通圏の鉄道会社中でも京都市交通局の48.1%、神戸市交通局の41.0%に次いで高く、各市の交通局ともども運賃を高めに設定しないと、建設費の償還に困難をきたしてしまうのだ。

中京交通圏はJR東海が最安、1km刻みで上げる名鉄

中京交通圏の話をする際、初めに断っておきたいのは106.8キロメートルというJR東海の平均輸送キロだ。この数値は中京交通圏だけで記録されたものではなく、他地区、それも東海道新幹線の数値を含めたもの。JR西日本の平均輸送キロも京阪神交通圏だけの数値ではない。両社には、国土交通省の調査に協力して適切な数値を公表するよう切に願う。

鉄道会社4社の運賃を比較すると、初乗り、5キロメートルおきの乗車キロのすべてにおいてJR東海が最安値を記録している点が興味深い。国鉄時代の1976(昭和51)年11月6日まで、実は国鉄の運賃は公営、大手民鉄と比べて半額程度と安く、三交通圏では国鉄の各路線の混雑が目立って高かった。同日に実施された運賃改定で国鉄は平均50.4%という大幅な値上げを断行し、今度は大手民鉄の運賃が下回って国鉄離れを引き起こしたほどだ。

JR東海の運賃は、国鉄時代の伝統を引き継いだものと言える。もちろん、JR東海が東海道新幹線という超高収益路線を抱えている点を忘れてはならない。

もうひとつ特筆すべきは名古屋鉄道の運賃が小刻みに上げられている点だ。表中で紹介した運賃のほか、乗車キロが10キロメートル以内の場合、4キロメートルでは190円、8キロメートルでは240円という運賃が存在する。今回取り上げた鉄道会社のなかで1km刻みの運賃を設定しているのは名古屋鉄道ただひとつ。同社の路線に営業キロが4キロメートルまたは8キロメートルの区間が多く、独立して運賃を定めたほうがよいと考えられたからなのであろうか。

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