留萌本線「石狩沼田ー留萌」廃線、苦渋の決断の裏 3月末で終了、また一つ消えるJR北海道の路線

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到着した4922Dから下りたのは高校生の一団だったが、代わって乗車したのはほぼ鉄道ファンだった。以前は通学と逆方向の列車は数人いれば上等だったが、廃止が濃厚になる頃から人数が増え、この日もざっと25人。ボックス席だけでは収まらずロングシートにも溢れた。駅では、昨年12月に発売開始した「ありがとう留萌本線記念入場券」は1週間で売り切れてしまい、キハ54形が図柄の「北の大地の入場券」が多い日は50枚以上売れると話していた。

定刻に発車。札幌方に踏み出してすぐに函館本線から離れると、車窓は再びすぐに雪原となった。まだ朝方の斜光線だから、田の畔と思しき盛り上がった部分に陰影がつく以外は真っ白である。かつて深名線がたどっていた方面には白銀の山が連なり、これまた美しい。そばで有名な江丹別はその山の先か…と思う。北一已、秩父別と停車するも乗降はなし。北海道のワンマン列車は前乗り前降りなので後部にいるとドアの開閉もわからない。

輸送密度200人未満 バスなどへの転換を相談する路線に

留萌本線廃止については、JR北海道が2016年11月に公表した「当社単独では維持が困難な線区」において、輸送密度200人未満(片道100人未満)に区分された(赤い線で図示されたことから通称「赤線区」と呼ばれる)路線については「鉄道よりもバスなどの方が適しており、利便性・効率性の向上も期待できると考えられることから、バスなどへの転換について地域と相談してゆく」としたことで表面化した。

同様に赤線区に挙げられた路線には、札沼線(学園都市線)北海道医療大学―新十津川間、根室本線富良野―新得間があり、さらに公表時点で地元との話し合いが始まっていた線区に日高本線鵡川―様似間、すでに方向性が出た線区に石勝線夕張支線新夕張―夕張間があった。なお、留萌本線は元来増毛までの路線であったが、利用減に加えて災害多発区間であった留萌から先は、防災対策に収支に見合わぬ額を要することを理由に、別途の判断で2016年12月4日限りで廃止されている。

沿線の対応を探す中で見つけた留萌市発行の『広報るもい』2022年10月号を軸に解説すると、JR北海道が2016年に維持困難線区を公表し、さらに2018年3月に北海道が「北海道交通政策総合指針」を、JR北海道が「経営計画の見直し(案)」を公表、そして同年7月にはJR北海道が国土交通大臣から「事業の適切かつ健全な運営に関する監督命令」を受けた。

次ページ「赤線区」の鉄道維持には国や道の補助はなし
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