初代「エスティマ」不遇でも一時代を築いた功績 今も感じる「天才タマゴ」フォルムの可能性

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また同じ年、それまで3列シート車を持っていなかったホンダは、アコードの生産設備を活用することで「オデッセイ」を登場させる。前輪駆動方式と低めの車高がもたらす走りはエスティマ以上に乗用車的で、スマートなデザインのおかげもあり大ヒットとなった。

エスティマの3代目モデル(中期型、写真:トヨタ自動車)

こうした流れを受けて、エスティマも2000年発表の2代目では、オデッセイと同じ前輪駆動に変更。待望のV型6気筒3.0リッターエンジンに加えて、ハイブリッドも追加した。北米向けは、ボディをひとまわり大きくした「シエナ」が担当することになり、エスティマは日本市場を主としたクルマとなった。

しかし2年後、プラットフォームを共有する「アルファード」が登場すると、押し出しの強いフロントマスク、豪華なインテリア、箱型ボディによる広いキャビンなどが人気を集めるようになる。

次世代に生かしたいそのフォルム

エスティマは2006年に3代目にモデルチェンジしたが、2008年にアルファードが2代目となり兄弟車の「ヴェルファイア」も登場すると、ますますその人気は高まり、エスティマのニーズは減少。その後はマイナーチェンジを繰り返すのみで、2020年で販売を終了した。

2016年に最後の大規模マイナーチェンジを受けた3代目エスティマ(写真:トヨタ自動車)

キャラクター的に近いオデッセイも、日本向けは2021年でフェードアウト。すでにマーケットの人気はSUVになっており、スタイリッシュなミニバンは頭打ちの状態になっていた。中途半端にカッコよさを追求するより、潔く箱に近づけ、広い室内空間をもたせたほうがわかりやすいのだろう。

しかし、エスティマが本来持っていた、先進的なイメージを生かすという手はあるはずだ。具体的には燃料電池自動車(FCEV)としての復活を期待したい。なぜなら燃料電池の燃料である水素は、液化しても比重は水の100分の7程度にすぎないからだ。

1990年代のクルマはこんなにも熱かった
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パッケージング的に好ましいのは、軽い水素を収めるタンクを車体中心の低い位置に置くセダンの「ミライ」より、屋根の上に積むバスの「SORA」のほうだろう。

SORAのパッケージングを乗用車のカテゴリーに落とし込み、スタイリッシュにまとめるには、エスティマのフォルムは適している。そう考えるのは筆者だけではないはずだ。

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森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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