ビジネスチャンスはシェアによって4倍に--『これからの日本のために「シェア」の話をしよう』を書いた三浦展氏(消費社会研究家)に聞く

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──シェアは新トレンドになりました。

しばしば、ある現象がトレンドとなり、どこまで大きくなるか、今だけか、対象が若いうちだけか、などと質問される。その答えは「転轍(てんてつ)機」が動くかどうかだと言っている。

今は大きなトレンドが支配する時代ではない。トレンドそのものが高度成長期やバブル期に比べ弱くなっている。たとえば、新設住宅着工件数は今80万戸、全盛期には200万戸あった。こうなれば、トレンド自体の大きさも小さくなる。逆に、小さなトレンドをバカにはできない。これはというものを押さえておかないと、それがいつか転轍機で切り替わり、大きくなるかもしれない。

消費という大きな船はなかなか回らない。しかし誰かが舵を切っているから方向転換している。また知らないうちに曲がっている。誰がその舵を切ろうとするのか、注意深く見ていないといけない。

──消費者の年齢も関係?

僕はセゾングループに在籍していた。そこでは消費者と言わず、生活者と言った。今はもう一歩進んで、「創費者」、すなわちプロシューマーと言ったほうがいい。セゾンが生活者と言ってから数えても30年が経つ。シェアハウスに住んでいる人、それを創っている人は、まさに30歳前後。プロシューマー世代だ。

──今はマイナーでも、10年後には大きなトレンドになりそうな予兆を教えてください。

山ガールや釣りガール、カメラ女子、鉄女、あの辺が気になる。「ポストフェミニズム」の女性だ。男女機会均等法の改正施行の年に生まれた人も、もう25歳。この世代はフェミニズムに拘泥せず、当たり前のように新しいことをする。

(聞き手:塚田紀史 =週刊東洋経済2011年3月26日号)

みうら・あつし
マーケティングアナリスト。1958年生まれ。一橋大学社会学部卒業、パルコ入社。『アクロス』編集長。「第四山の手論」「団塊世代論」などで注目される。三菱総合研究所を経て、99年カルチャースタディーズ研究所設立。調査・研究を踏まえ、新しい時代の予測、社会デザインの提案を行っている。

『これからの日本のために「シェア」の話をしよう』
NHK出版 1575円 237ページ

  

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