本当の個性は、「圧倒的変態性」のことである 「常識の毒」は、薬に変えられるか?

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僕らは一人ひとり、自分の内側に誰からも理解されない「圧倒的変態性」を抱えて生きています。常識というのは、この「圧倒的変態性」を覆い隠すためのベールです。

よって、「常識を大切にする」ということと「個性を認める」ということは、まったく矛盾することはありません。というよりも、自分の中にある圧倒的変態性、すなわち一人の人間としての個性を守り、育てていこうとするのであれば、誰よりも常識的な振る舞いを身につけることが求められるのです。

個性とは、孤独で強固なもの

世の中には、政治や社会問題、あるいはアートや文学について気軽に「自分なりの見解」を述べようとする人がいます。しかし、本当の意味での個性というのは、そのようにすぐに言葉にして、誰かに理解されうるような次元にはありません。本当の意味での「あなたの言葉」というのは、自分以外のあらゆる他人からの理解を拒絶してしまうような、圧倒的変態性としてしか存在しえないものなのです。

簡単に言葉で表現できたり、ましてや他者から理解されたりするようなものは個性なんかではありません。それは往々にして、どこかで小耳にはさんだ他人の考えであり、他人の感情に過ぎないのです。

個性とは「私はこう感じている」という、孤独だけれど、しかし強固で揺るぎない感覚のことです。世界中で自分以外の誰もが「違う」と感じていても、一辺の疑いもなく「こうだ」と確信できること。自分の中にある圧倒的な確信こそが、本当の意味での個性といえるものなのです。

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名越 康文 精神科医

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なこし やすふみ / Yasufumi Nakoshi

1960年、奈良県生まれ。精神科医。専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現:大阪府立精神医療センター)にて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、99年に同病院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。
著書に『心がフッと軽くなる「瞬間の心理学」』(角川SSコミュニケーションズ、2010)、『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)などがある。
夜間飛行よりメールマガジン「生きるための対話」刊行中。オフィシャルウェブサイトはこちら。twitterはこちら

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