人工透析求め、原発の町から東京へ、避難者がつきつける重い課題(上)【震災関連速報】

人工透析求め、原発の町から東京へ、避難者がつきつける重い課題(上)【震災関連速報】

日本の人工透析患者は約29万人。今回、震災の被害が著しかった岩手、宮城、福島の3県には、約1万2000人の透析患者がいた。人工透析は腎臓の機能が低下し、自力で血中の老廃物を濾過できない腎不全の慢性腎臓病患者が行う治療だ。腎臓の機能が低下したまま放置すると、尿毒症など深刻な事態を起こす可能性がある。そのため、透析は通常1回4時間の治療を週に3回欠かさず行うことが必要だ。

今回の震災では多くの「透析難民」も発生した。そのひとりである金澤かつ子さん(61)が震災後、透析患者に何が起こったかを語った。金澤さんは、福島第一原発から約8キロメートル離れた福島県双葉郡浪江町で11日に被災、17日に東京に避難してきた。

3年前から、糖尿病の合併症による腎臓病で人工透析を続けている金澤さん。「避難所の過酷な環境で血圧も上がり、死ぬかと思った」と今回の体験を振り返る。金澤さんの体験から、今回の震災で見えてきた医療体制の課題を探る。

金澤さんは地震当時、浪江町にある自宅にいた。自宅に大きな損壊はなかったが、電気が止まり、テレビを観ることができず情報源を失った。しかし、消防団に入っておいる長男(34)が無線で外部との連絡を取っていた消防署の屯所に11日の夜は一泊した。

翌日には、原発事故による10キロメートル圏外への避難勧告を無線で受け、川俣町内にある避難所へ移動。さらに、その翌日の13日にはさらに20キロメートル圏外への避難勧告が出され、保険証と銀行通帳などわずかな荷物だけで町を出た。2カ所の避難所で定員オーバーを理由に拒否されたのち、辿りついたのは浪江町から50キロメートル離れた福島県伊達郡川俣町の高校の体育館に作られた避難所だった。

ようやくたどりついた避難所も持病を抱え、足も不自由な金澤さんには耐え難い環境だった。まず、困難を伴ったのはトイレの利用だ。体育館の外に設置されたトイレに行くには、階段の登り降りが必要。約1000人を収容するこの避難所では長蛇の列ができており、手摺もない。金澤さんは処方されていた下剤の服用をやめ、トイレに行く回数を極力減らした。

最大の懸念は人工透析をどこで受けられるかということだった。避難所に医師はいない。保険師に透析を受けたいと相談したが、半日経っても回答はない。その後、同じ避難所にいた知人の助けで、ようやく人工透析を受け付けている川俣町内の病院に向かうことができた。診察を受けると、普段120~130mmHg程度の収縮期血圧が200mmHg以上に上昇していた。透析後も抗生剤などの薬を手にするために薬局で3時間以上待ち、その後避難所へ戻った。

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