アジア富裕層が吊り上げ、マンション急騰の脆弱 実需と乖離し、国内サラリーマンは手が届かず

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2つ目の要因は、日本の富裕層によるタワマン節税のための投資です。このタワマン節税に関して、最近、関係者に激震が走りました。昨年12月に公表された「令和5年度税制改正の大綱」で、タワマン高層階の相続税財産評価を実勢価格に近づける検討をする旨が示されています。

まだ具体的にどのようにすると決められたわけではありませんが、もし法改正が実現し、タワマン節税ができなくなったら、日本の富裕層の買いの勢いは確実に弱まっていくでしょう。2つ目の「日本の富裕層によるタワマン節税」という要因は、近く消滅します。

日銀の金融緩和政策が今後もバブルを下支え

3つ目の要因は、日銀の金融緩和政策です。昭和・平成バブルは、1980年代の日銀の金融緩和によって始まり、三重野日銀総裁による引き締めによって崩壊しました。今回のマンションバブルでも、黒田総裁の異次元の金融緩和による超低金利がバブルを側面支援してきました。

先日、黒田総裁の後任に植田和男氏が内定しました。植田氏は金融緩和を維持する意向のようですし、仮に心変わりしたとしても、異次元の緩和を修正し、利上げするのは物理的に困難でしょう。よく「利上げしたら国民の住宅ローンの返済が滞って、パニックになる」と言われますが、日銀自身も深刻な事態に陥るからです。

日銀は、異次元の緩和で国債を大量に購入してきた結果、2022年末で564兆円の国債を保有しています。雨宮副総裁の昨年12月の国会答弁によると、1%の金利上昇で日銀が保有する国債に28.6兆円の評価損が発生します。日銀の自己資本は5兆円しかないので、1%と言わず0.2%でも利上げすれば実質債務超過になってしまいます。

日銀が債務超過になったら、円に対する信認が失われ、円安・インフレが加速する可能性が高まります。増資で債務超過を免れるなどの方策があり、利上げが「絶対に不可能」とまでは言いませんが、極めて困難な政策転換であるのは間違いありません。日銀は、自身が生き延びるために、今後も金融緩和でバブルを後押しし続けるのです。

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