日本が難民申請者を「犯罪者」扱いする異常さ 「帰りたくても帰れない」外国人を強制送還

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――ただ、在留資格がないまま日本で暮らすのは決して楽ではありません。

日本で在留資格がないまま難民申請をしている多くの人は、不安定で不自由な生活を強いられています。入管施設に収容されると送還されることが前提となり、収容期限が定められていません。そのため鬱状態や幻覚などの拘禁反応が出ることもあり、精神的に大きな不安を抱えます。

一時的に入管施設の外で生活できる「仮放免」という制度もありますが、働くことや、自由な移動ができません。月に1回など、定期的に入管施設に「出頭」することも求められます。

国民健康保険にも加入できないので、生活費や医療費を友人や支援者に頼りながらの生活になります。このような生活を強いられてもなお、帰れない事情があるのです。

日本から帰国後、政府に殺害された事例も

――改正案では、そのような人も強制送還可能になります。

赤阪むつみ(あかさか・むつみ)/大学院修了後、NPO法人日本国際ボランティアセンター(JVC)のラオス事務所にて、森林保全に関連した地域開発と政策提言活動を行う。2014年にJARに入職。定住支援部、支援事業部を経て、2018年よりJAR渉外チームマネージャー(編集部撮影)

その点が大きな問題です。日本も加入している難民条約では、難民や難民申請者を送還すること自体が禁じられています。これは「ノン・ルフールマン原則」といわれ、危険がある国に、難民を送還してはならないという難民保護のもっとも重要な原則です。

現行の入管法も、難民申請中の人の送還を禁じています。しかし残念ながら、過去には日本での難民申請者が出身国に戻った後、政府に殺害されたという事例もあります。

入国時に庇護を求めたのにもかかわらず難民申請が認められず、空港から直接送り返されてしまった人もいるでしょうが、その数は不明でその後どうなったかはわからないままです。

――改正案では、難民申請を3回以上行った人を強制送還の対象にするとあります。なぜ何度も申請を繰り返す人がいるのでしょうか。

日本の難民認定はハードルが高い。日本の難民認定率は0.7%と諸外国と比べてかなり低い状態で、本来難民として認められる人も認められていない状態です。

日本の難民認定の基準や審査は不透明性が高く、1回目の審査で適切な審査が行われているとも言い切れません。過去には3回目の難民申請中に難民として認められた人もいます。2010年から2021年にかけて難民認定された377人中、25人は複数回目の申請でした。

難民条約では、難民は「人種、宗教、国籍、政治的意見または特定の社会集団に属するという理由で、自国にいると迫害を受けるおそれがあるために他国に逃れ、国際的保護を必要とする人」と定義されています。例えばヨーロッパでは「ロヒンギャ難民」というだけで、弾圧の可能性を認め、難民認定される国があります。

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