ユニクロの買い物客は、なぜ「ゲスト」なのか 顧客を指す言葉が変わったことの意味とは?

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ゲストという言い方はもう賞味期限が来たのではとの声もある。

言語に関する著書があり「文法恐怖症」というブログでも知られウルパトリシア・オコナーは「ピークを過ぎたと言われても驚かないだろう」と言う。「一時的にこういう使われ方をすることがあっても、そのうちみんなが少し飽きてきて魅力を失う。わざとらしく感じられるようになってくる」

実際、ノードストローム百貨店の広報は、同社では今後も胸を張って「カスタマー」という表現を使い続けるだろうと答えた。

「ゲスト」側はどう思っている?

もっとも当の「ゲスト」がそうした店側の変化を意識しているかというとあやしいところだ。ニューヨークにあるターゲットの店舗を出てきた客数人と話をした限りでは、誰も「ゲスト」と呼ばれたことに気づいていなかった。

「気がつかなかった」と買い物袋を積んだショッピングカートを押して駐車場に向かっていたジェリー・ウェルシュは言った。

「ゲスト」という呼び方に歓迎の気持ちを感じるかと尋ねると、「別にどっちでもいいわ」という返事。大事なのは言葉よりも気持ちだとウェルシュは言う。

買い物袋を下げて出てきたデービッド・ハーシュマンは、店員にどう呼びかけられたか気にもとめなかったと言った。ターゲットで買い物をする理由は「お買い得だから」というのに尽きると彼は言う。

冒頭のウォルグリーンでは先ごろ、客を見送る際に「お元気で」と声をかけるよう従業員に指示していたのをやめることにした。

さて、「次のゲストの方」という声がけはいつまで続くのだろう?

(執筆:Hilary Stout記者、翻訳:村井裕美)

(c) 2015 New York Times News Service

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