世界初「感情可視化ツール」開発の意外なきっかけ 「人の気持ちが分からな過ぎた」技術者の想い

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ものすごい恐怖を感じると同時に思ったのが、感情を可視化できれば、この病に苦しむ人たちの感情を知ることができるということ。

そうした発想と自分のもともとの課題を総合した結果、「感情の見える化」が自分のテーマになりました。

今は医工連携型の研究に取り組んでいます。そもそも私は工学部出身で電気電子が専門でしたが、脳波の研究をしていると、やはり脳の中身が知りたくなるんですよ。

脳波によって感情が変わることは現象論として目に見えて分かったから、今度はなぜ脳波が変わるのかを知りたくなった。

そうなると、脳を直接見たくなるじゃないですか。例えば、直接的に脳を刺激することで脳波がどう変化するかは、頭を開いて見てみないと分からないですよね。

それで医学部に行って、博士号を取ったんです。そうやってデータ面からも、物理的な面からも研究開発を進めたことで、感性アナライザの開発を実現できました。

脳波の計測時はデータを見ながら本人の雰囲気も観察するので、今の私は誰よりも人の感情が分かるようになりましたね。

自分の「本当の気持ち」を客観的に知る時代は近い

現在、私は電通サイエンスジャムのCTOでもあります。きっかけは、2012年頃のある日のこと。「脳波計を見せてほしい」と、謎の3人組が研究室にやって来たんです。

「脳波でこんなことをやりたい」という話を好き勝手してくるものだから、一応話を聞いていたら「実は脳波を使ったビジネスに取り組みたいと思っている」と言われて。

それで感性アナライザの説明をしたら、「一緒にやりませんか?」と。面白そうだったから一緒にやろうと思って、そこでようやく「あなたたちは誰ですか?」と聞きました(笑)

やがてその人たちと現在の電通サイエンスジャムを一緒に作ることになったんです。

実際に、『感性アナライザ』をビジネスの現場で導入してみたら、企業の皆さんがとても喜んでくださいました。

オーストラリアで行われたユニクロのキャンペーン。数種類の画像を見た時の脳波から顧客の今の状態を推定し、600種類のTシャツの中から気分にぴったりのTシャツをサジェスト。新しい購買体験を実現した(出典:電通サイエンスジャム)

企業にとって、アンケートでは出てこない意見がとれるのは貴重なことです。定性的な調査は、どうしても本心が見えないところがありますから。

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