ケンタッキーが「バーガー」に名称変えた深刻理由 2018年以来、目標に掲げてきた「利用の日常化」

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ほかのバーガーチェーンでの、主食とサイドメニューの関係性とは逆なのだ。

これが、KFCにとって大きな課題だった。

利用の「日常化」が課題

例えば同社において、2018年以来経営計画上の目標に掲げてきたのが「日常化」だ。つまり、イベント時だけでなく、ふだんの生活の中で利用してもらえるチェーンを目指すという意味だ。

相模原大野台店内観。KFCでは2020年4月より店舗デザインのリニューアルを順次行っている。新しいKFCはスタイリッシュかつシックな印象だ(撮影:大澤誠)

考えてみればこれは当たり前のことで、イベント時だけ知名度が高まるより、年中日常的に利用してもらい、さらにイベントでも特別なメニューなどで訴求できたほうが、ブランドの普及という意味でも、売り上げにおいてもメリットが大きいに決まっている。

逆にKFCではなぜここに至るまで、日常化に取り組んでこなかったのだろうか。

これは推測だが、デイリーブランドとして訴求したくても、なかなかうまくいかなかったのではないだろうか。

まず、「オリジナルチキン」というKFCのアイデンティティは、ブランド力を維持する意味でもファンのためにも、ぶれることなく持ち続けなくてはならない。

しかし、メニューとしてのチキンは一般的に「おつまみ」のような位置付け。毎日の食事としてはなじみにくい。

加えて「オリジナルチキン」自体、非常に手間を要する商品のため、ほかのメニューを増やすのは容易なことではない。例えば知る人ぞ知る「オリジナルチキン」のこだわりの一つが「店内調理」だ。登録飼育農場から店舗に毎日配送される食材に、一つひとつ粉つけを行った後、高温の圧力釜でじっくり揚げる。この店内での工程で最低でも30分かかるという。

これまでサンド商品の数が限られていた理由としても、オペレーション面での制約があったのではないだろうか。このようにメニューの中で、食事メニューが「おまけ」のような位置付けであれば、日常食としての訴求は難しいだろう。

しかしこうした事情がありながらも、「日常化」を課題として掲げてからは、同社のメニューにはさまざまな工夫が見られる。

例えば2019年からは、サンドとポテト、ドリンクのセットをランチメニューとして定番で提供。また、サンド、ツイスターといった食事カテゴリーでの期間限定商品も投入頻度を高めている。2022年では2〜3カ月に1回の頻度で期間限定商品を発売。

秋に「とろ〜り月見サンド」4種で各チェーンが繰り広げた「月見戦線」に参戦していたことも記憶に新しい(ただしとろ〜り月見和風カツサンドは2016年から発売している季節限定商品)。

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