マルクスが150年前に予言した、資本主義崩壊 資本主義崩壊後とポスト資本主義のゆくえ

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先ほど引用した文章の後で、マルクスは次のように敷衍(ふえん)しています。

諸個人の自己労働にもとづく分散的な私的所有から資本主義的な私的所有への転化(第1の否定・岡本)は、もちろん1つの過程である。それは、事実上すでに社会的な生産経営にもとづく資本主義的な所有から社会的な所有への転化(第2の否定・岡本)に比べれば、比べものにならないほど長くて困難な過程である。前(第1の否定)には少数の横領者による民衆の収奪が行なわれたのであるが、今度(第2の否定)は民衆による少数の横領者の収奪が行なわれるのである(マルクス同書)。

この引用文を読むと、マルクスがポスト資本主義への道をどう考えていたのか、予想できます。前資本主義から資本主義へ、資本主義からポスト資本主義へという、2つの過程を比較していますので、それに沿って述べてみましょう。

ポスト資本主義への流れ

まず、資本主義以前は、小規模の個人経営の活動が行われ、個人的な私的所有が成り立っていました。この段階が否定され、資本主義的な大規模経営が生じることになります。ここでは、少数の資本家と、多数の無産者労働者が生み出されます。この時代には、労働者たちの協業と、土地や生産手段の「共同占有」は作り出されている、というわけです。そのためマルクスは、資本主義的な所有は、「事実上すでに社会的な生産経営にもとづいている」と表現します。

そして次に、これを否定するのが第2の否定ですが、資本主義からポスト資本主義への移行となります。この否定の否定によって、少数の横領者(資本家)が収奪されるので、無産者大衆の個人的な所有が再建(最初の個人的所有の再建)されることになります。

また、未来社会は、資本主義によって確立された大規模生産(協業と、土地および生産手段の共同占有)を継承します。その点でマルクスは、ポスト資本主義への移行は、それほど困難ではないとみなしていたようです。

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