IBMは、どうしてiPhoneを選んだのか アップル×IBMの提携で始まったこととは?

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もっとも、この提携は互いの強みと弱みが補完できる側面もあるが、一方でいくつか疑問もある。情報ソリューションの提供を生業とするIBMが、特定企業の基本ソフト(iOS)と端末を限定してサポートする必要があるのか?という点だ。

ではなぜアップルと提携し、iOS限定でのアプリ開発を行っているのか。なぜiPhone/iPadならば変わるのか。アップル/IBMそれぞれの役割とはなになのか?

日本IBM、モバイル事業統括部で事業部長をつとめる藤森慶太氏

藤森氏は「iPhoneは劇的にコンシューマ市場でのモバイル体験変えましたが、企業向けという視点で言えば、スマートフォンのようにカスタムアプリが動く、ビジネスにも活用できる端末はあった。しかし、周辺の技術が整っておらず、現実にはビジネスに使えるようなものではなかった」と振り返る。

”前時代的スマートフォン”のころの問題点として藤森氏は、通信速度とバッテリ持続時間の問題を挙げた。どんなに素晴らしく使いやすいシステムを作ったとしても、1時間ほどでバッテリーが切れたり、通信が遅すぎて顧客先で必要な情報をタイムリーに得られないようでは企業向けに提案できない。

一方、iPhone以降の現代的スマートフォンの時代は、劇的な操作性の改善もあって技術投資がスマートフォンに集まるようになり、ディスプレイ、バッテリ、そしてモバイル通信インフラなどの環境が急速に改善していったのはご存知の通りだ。

モバイル向け基本ソフトには短所

コンシューマ市場が牽引した携帯型端末のトレンドが、スマートフォンを安心して企業で活用できる基礎を作り出したということだ。しかし、コンシューマから発生したトレンドということもあり、企業向けに必須の管理機能を持つ扱いやすいモバイル向け基本ソフトの環境は、なかなか整わなかった。

コンシューマ・エレクトロニクス市場の新たな勢力地図で優位に立つため、アップルもグーグルも、企業向けの機能を充実させる余裕がなかった。彼らが本気で企業向けの管理やセキュリティといった要素に目を向け始めたのは、比較的最近のことだ。このため、各企業に導入されているアプリケーションのレベルでは、情報閲覧や入力に使う端末としてスマートフォンに対応する機能は加えられても、本当の意味でシステム統合はされていなかったという。

藤森氏が用意したIBMカスタマーのレポートによると、約8割の企業が社員にスマートフォンを配布し、スケジュールやメールなどの連絡、コンタクト先の共有程度でお茶を濁しているのが現状だという。さらに少し進んでグループウェアの端末として利用されているケースもあるが、それはかなりのレアケースといえる。

次ページ”アナリティクス”まで持ち込むのがIBMの役割
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