埼玉・小川町メガソーラー、開発地で高まる懸念 経産相から厳しい勧告受けても事業実施追求

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小川町環境農林課によると、小川エナジー合同会社は「調整池土砂堆積量調査」を行うと町に連絡し、町は地元水利組合と協議して同意を得て行うよう、指導した。しかし、8月のケースは水量が多すぎたため、水利組合は同社に対し、「下流農地に被害が出たり、既設水路が壊れたり土砂の堆積が起こらないよう、今後、水抜き穴の止水栓を抜いて排水する場合は1カ所ずつ開閉して順次実施してほしい」と伝えたという。

調整池の水抜き穴の「止水栓」につながる5本のロープ
調整池の水抜き穴の「止水栓」につながる5本のロープ。昨年8月、止水栓5つのうち3つがいっぺんに抜かれ、大量の水が下流へと流れた(撮影:河野博子)

事業計画地内での切り土、盛り土の安全性

外部からの土砂の搬入を行わないとしても、基本的に山の高低差をならし、整地する作業が行われることになる。事業地内で切り土、盛り土が行われることになるが、地盤の安全性は保たれるのか。その点は、経済産業省が「評価書」を確認する際のポイントになるとみられる。通常の太陽光発電所とは違った形で架台を設けるとなれば、強風や豪雨の際の安定性もチェックされることになろう。

昨年2月、経済産業省は、評価書が出された場合、変更命令を出す可能性もあると説明している。経済産業、環境、国土交通、農水の4省庁による「再生可能エネルギー発電設備の適正な導入及び管理のあり方に関する検討会」は、昨年10月に提言を出したが、さまざまな検討は続いている。

環境アセスメント手続きはややもすれば形式的に進められることもあった。環境アセス手続きや林地開発許可など、開発に関連する手続きに係る国や都道府県には、厳正なチェックと執行が求められる。

河野 博子 ジャーナリスト

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こうの ひろこ / Hiroko Kono

早稲田大学政治経済学部卒、アメリカ・コーネル大学で修士号(国際開発論)取得。1979年に読売新聞社に入り、社会部次長、ニューヨーク支局長を経て2005年から編集委員。2018年2月退社。地球環境戦略研究機関シニアフェロー。著書に『アメリカの原理主義』(集英社新書)、『里地里山エネルギー』(中公新書ラクレ)など。2021年4月から大正大学客員教授。

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